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家系図に対する新たな需要と
家系図作成代行業者の裏側
written in 2007/11/13
事例:Ancestry.com 他

Ancestry.com  現在の総理大臣、福田康夫氏の父親は、いまから30年前に総理大臣を務めた福田赳夫氏であることは皆が知っていることだが、康夫氏の妻方の家系も明治から続く実業家であり政治家として有名な一族で、電力会社の会長職も勤めているいる名家の出身である。突然の辞任で世間からの叱責を浴びた安倍晋三氏も、岸伸介が母方の祖父で、そこから佐藤栄作や吉田茂とも親戚の関係で繋がっている。さらに晋三氏の妻、昭恵夫人は森永製菓創業一族の令嬢だ。民主党と自民党に分れて活躍する鳩山由紀夫氏、邦夫氏の兄弟にしても、祖父は日ソ国交回復を成したことで名を残す鳩山一郎であることに加えて、彼らの母親はブリジストン創業者(石橋家)の娘にあたる。

このように現代の有力政治家は、ただ祖父や父親からの地盤を引き継いだ二世、三世議員というだけではなく、配偶者には有力実業家の血筋を選ぶことで、政治活動に必要な資金の後ろ盾を抱えている。まさに戦国時代さながらの政略結婚といった様相で、華麗な家系を築いているわけだ。そのため現在の政治情勢を占うには、何代も先にさかのぼって彼らの家系図を調べてみることが欠かせない。政治家の例に限らず、実業家同士の関係でも、娘や息子を結婚させて閨閥(けいばつ)を作ることで、お互いのビジネスに活かすことは頻繁に行われている。

一般庶民はそこまで“家系”というものを重視してはいないものの、全く無視して生きているというわけでなない。進学や就職、結婚、出産など人生の要所要所では戸籍簿を取り寄せる機会がある。さらにこれから正確な家系図が必要となるのが遺産相続の時である。自分が亡くなった後に身内がトラブルを起こさないようにと遺言書を作成しておく人が増えているが、その際に家系図を併せて作成することがある。それには相続関係を図面で説明するという目的の他に、現代では核家族が進んで葬式の時くらいしか親族一同が顔を合わせる機会がないことから、我が家の家系をしっかり記録として残しておきたいという想いもあるようだ。

さらにもう一つ、家系図に対する新たな需要として見込まれているのが医療現場での利用である。近年では病気の因子となる遺伝子を突き止めて、その欠陥を修復・修正する遺伝子治療が実用化の段階を迎えているが、その時には医師から「家系図を書いてきてください」と求められるようになる。医師は患者の家族や血縁者の病歴などを先祖の代にまでさかのぼってヒアリングして、遺伝によって影響されている体質や病気の原因を突き止めるのだ。

日本ではまだそれほど騒がれていないが、米国では十代前の先祖にまでさかのぼって病歴を調べることにより、かなり精度の高い遺伝子治療ができると言われている。たとえば「ストレスに強いとか弱い」ということも、単に精神論の話ではなくて、遺伝子によって受け継がれた体質として究明できる可能性が高い。

もちろん十代前の先祖まで特定できる家は少ないだろうが、家系をできるだけ昔までさかのぼることが健康管理にも役立つということで、ファミリー・ツリー(家系図・血縁図)に関する市場がにわかに活気付いている。もともと米国には戸籍制度というものが存在しないため、各自が様々な資料を集めて家系のルーツを探ることが趣味や娯楽としても普及していたが、それが遺伝子分野の市場とリンクしはじめている。その先にあるものは、政治家一族の野望とは違うとしても、我が家の子孫繁栄にふさわしい意図的な家系作りという、ちょっと恐ろしい方向性である。その動向とそこから生まれるビジネスについて見ていくことにしよう。
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この記事の核となる項目
 ●家系図に対する需要の拡大と作成代行ビジネス
 ●投資家が注目する家系図ポータルサイトの価値
 ●米国の家系調査とデータベースサービス
 ●家系図ポータルサイトの収益構造について
 ●家系図からDNA系図への進化が示すこと
 ●遺伝子研究の成果で結実するDNA診断ビジネスの方向
 ●DNA系図による遺伝子治療の最前線
 ●ITと遺伝子が融合した新たな系図学・血統学
 ●多様化するライフスタイルで変化する遺産相続の損得勘定
 ●占い師に代わる人生のリスクを科学的に診断するビジネス
 ●複雑な人間関係によって見直される家系図と新たな人脈ビジネス
 ●新たな家庭の形態が生み出す「家族の絆を深める」ための市場


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JNEWS LETTER 2007.11.13
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