written in 2006/1/7
事例:WorldCare 他
自分の仕事に責任を持つことは、どんな職業においても重要なことだが、「プロの仕事」に対する信頼性が揺らぎ始めている。その背景には、マンションの耐震性偽装問題にみられるような、安全性よりも利益を優先したビジネスの方針へ傾倒しはじめている世の中の流れがあることは否めない。主力取引先の業者からコストダウンを要求されたら、品質は多少犠牲にしてでも要求に応じることが取引先との関係を維持していく上では仕方ないと考える現場関係者は、建設業界に限らず様々な分野で増えている。
また、企業内では急速な人員のリストラによってサービスの品質維持が難しくなっている傾向もある。これまで十名のスタッフによって運営されてきた部署が、社内の人事改革によって8名の体制へと人員削減されると、そこでは品質の低下や人為的なミスが高い確率で生じるようになる。このようなトラブルは、やがて消費者が被害者になるという形で露呈する。
トラブルの原因が意図的でないにしても、消費者側でも自分が深刻な被害者にならないための対策を予め講じておく必要がある。大きな買い物や重要な決断をする際には、業者一社のみの判断や情報だけを信用するのではなく、第三者的なスペシャリストからの助言も参考にして最終的な決断をすることが大切になる。そして、その“スペシャリスト”は業者との間で「元請けと下請け」というような利害関係のないことが重要だ。
そこで消費者の心強いブレーンとして、業者が手掛けるサービスを客観的に評価して、助言を与えるスペシャリストの存在が注目されている。これは「セカンドオピニオン」と言われるもので、もともと医療の分野から普及している。生命に関わるような重い病気では、主治医一人だけの判断で治療法を決めることにはリスクがあるため、主治医とは利害関係のない“第二番目の医師”を患者側がブレーンとして探し出し、主治医の診察内容について適切な評価やアドバイスをしてもらう仕組みだ。
日本では、セカンドオピニオン制について「主治医を信頼していないようで申し訳ない」という風潮がみられるが、米国ではすでに医療の常識となっていて、その仲介ビジネスが成立するまでに至っている。そこで視点を一歩進めて、セカンドオピニオンを医療以外でのビジネスに活用することを考えてみたい。人生を左右するような大きな買い物をする際には相見積もりをとるように、第三者の意見も参考にして意思決定したいと思う場面は日常よくある。医療のセカンドオピニオンはその中の一つととらえれば、新たな知的サービスとしての可能性が見えてくる。
(海外ネットビジネス事例一覧へ)
●米医療業界におけるセカンドオピニオンサービス
●セカンドオピニオンの仕組み(心臓病のケース)
●欧米で急成長するセカンドオピニオンの紹介サービス
●オンラインによるセカンドオピニオン機能
●プロの仕事を客観的に再評価するセカンドオピニオンの応用範囲
●税金の払いすぎを取り戻すセカンドオピニオン
●企業のIT投資におけるセカンドオピニオン
●セカンドオピニオンの役割を果たす消費者コミュニティ
●オンライン消費者の時代に台頭する情報ビジネスと専門職
●企業とは反対側に立つ消費者団体としての起業と事業プラン
JNEWS LETTER 2006.1.7
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