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出版の電子化を支援する
パブリッシング・ソリューション市場
written in 2004/1/20
事例:Ninestar 他

Ninestar Information Technologies Ltd.  出版の電子化に伴って生み出される市場は、電子書籍の販売だけでなく従来の紙書籍に電子的な付加サービスを与える分野にも潜在的な商機が潜んでいる。わかりやすい事例では、米アマゾンコムがサイト内で販売する書籍の内容について、全ページがオンライン上で検索できる「Search Inside the Book」というサービスを昨年末に発表したことで話題になった。これは書店(実店舗)のように立ち読みができないというオンライン書店の欠点を補完する書籍の全文検索サービスだが、使い勝手が良すぎて「逆に本が売れなくなる」と作者達からのクレームが高まっているほどだ。

アマゾンの新サービスに限らず、「紙書籍に書かれている内容を手軽に検索したい」というニーズは高まってる。その中でインドのITソリューション企業であるNinestars Information Technologies(NIT)社は、新聞社をはじめとして出版社、大学、政府機関などをターゲットにして、紙のデータをデジタル変換するアーカイブサービスのノウハウを確立して世界的な企業へと成長した。

同社が手掛けるサービスは出版社(コンテンツ所有者)と販売業者(電子書店等)の間に位置していて、出版社が長年にわたって蓄積されている出版物をデジタル化して電子書籍へと変換するソリューション技術を提供している。例えば、同社の「starchive」と呼ばれるオンライン書庫サービスを新聞社が導入すると、
過去に発行された膨大な新聞紙面をデジタル化してオンデマンド配信できるようになる。
Ninestar Information Technologies Ltd.

書籍ダイジェストのモバイル配信

     何かにつけて忙しいビジネスマンにとって、本のダイジェスト版を手っ取り早く得たいというニーズも高い。そのための媒体としてはやはり“携帯電話”というのが現代の時流だ。その事例としては、カナダのExecuGoMedia社がモバイル端末向けにビジネス書の要約版をオンライン配信するサービスを行っている。

    execubook.com

    このサービスの利用は年間99ドルの登録料を支払うことで始められる。携帯端末のアドレスに書籍のリストが掲載されたメールが週1回のペースで届き、利用者はその中から読みたいタイトルについて、同社のオンライン書庫にアクセスしてそのダイジェストを読むというものだ。個別に1タイトルだけを購読する場合は2.99ドルの購読料を支払う。同社のダイジェストを読んで本を購入する場合はアマゾンコムなどを利用する。いわば、有料の新刊書籍ガイドサービスといえる内容だ。

    日本でもPCユーザー向けの書評配信サービスは以前から存在しているが、携帯ユーザー向けにはまだ市場開拓の余地がある。有料で書籍のダイジェスト配信を実施するには著作権の問題が絡んでくるが、出版社との提携による方法ならば成長が見込めるサービスになるかもしれない。


新聞は無在庫でプリントアウトする時代へ

     駅構内の売店などで経済からスポーツまで多種類の新聞が販売されているのは見慣れた光景だが、これが電子出版へと切り替わることもイメージしておきたい。オランダのハーグにあるSatellite Newspapers社が開発した「新聞キオスク端末」はその可能性を示唆するものである。

    同社が開発した新聞販売用のキオスク端末(店頭端末機)は、世界中の新聞の最新版をオンデマンド印刷して販売する機能を備えている。現在は世界 130社の新聞を対象としており、既に世界126カ所に設置されている。日本の新聞では、毎日新聞とスポニチをこの端末から購入することができる。利用する際には、料金の支払いはクレジットカードまたは専用のキオスクカードを挿入して行う。新聞のデータは衛星回線を通じて新聞社からキオスク端末に送信されて、端末内のプリント機能でオンデマンド印刷された新聞が取り出せる仕組みだ。

    この方法ならば毎朝各駅にまで新聞を配送する必要はないし、売れ筋の大衆紙ばかりでなく、なかなか駅では見かけることがない専門的な業界新聞なども購入できるようになる。現在のサービスは新聞全面を印刷するものだが、指定した紙面やジャンルだけで複数の新聞を印刷できるクリッピングサービス、過去のダイジェスト記事の出力などが加われば、新聞業界にとっても革命的なキオスク端末となるだろう。

    Satellite Newspapers

    これまで電子書籍が話題のぼる際には「やはり電子書籍より紙書籍のほうが読みやすい」といった論点になることが多かったが、両者の優劣を付けるという考え方は既に古いという意識を持っていた方が良い。これからの電子出版事業は、紙書籍の足りない部分を電子出版が補うという位置付けの元に、紙とデジタルとを融合させた出版事業へと進んでいくことが予測されている。その具体的なイメージが携帯電話への小説配信や新聞キオスク端末などの事例といえるだろう。

    たしかに百科事典のように“電子化”の波を受けて消滅してしまう書籍も、これからは少なくないだろうが、これまでの業界に固執した収益構造から脱皮して、電子出版による新しい収益の道を作ることができれば、従来のように在庫、返品リスクのない新たな出版ビジネスへと事業を発展させることも可能だろう。そこでは電子化に向けた出版物の著作権管理やライセンス契約のポイントを押さえて、新しいパブリッシング・ソリューションの技術を導入していくことが、出版業者にとって成功への礎になるはず。またそれが、関連のソリューション技術を開発するベンチャー企業にとっての商機であることは言うまでもない。
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