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法人顧客獲得に活路を見出す
新オンライン宅配サービスの視点
事例:PurpleTie.com
written in 2000.11.9

 購入した商品を自宅まで届ける「宅配サービス」は、交通事情もあってか日本より米国のほうが発達していて、こまごまとした日常雑貨までオンラインで注文を受けて配達する宅配サービスが次々と登場している。反面、サービスを開始して早々と撤退する企業が相次いでいる。日本国内でもオンライン宅配サービスがこれから本格化するという段階に入ったが、そこには思わぬ落とし穴が待ち受けている。

 宅配サービスには大きく分けて、ショップ自身がオンラインで購入した商品の宅配を行うもの(自社配送型)と、レストランなど飲食店からの出前を代行するようにショップからの依頼を受けて顧客宅まで商品を届ける(委託配送型)とがある。いずれも「注文から数時間以内で配送」するのがサービスの特徴だ。しかし、一般消費者向けにおこなう宅配サービスの多くは、小さな注文単価に対して配送負担は大きく、いずれも苦戦している。




失敗するB-to-C型宅配サービス

 “Urbanfetch”ではニューヨークで「オンライン注文・即日配達」を謳って日常雑貨品の宅配を行っていたが、わずか1年足らずでこのサービスから撤退した。業績不振の理由として、人件費がかさんだことや競合他社の台頭などを挙げている。たしかに、日常雑貨品は扱う商品アイテム数も多いこともあり、宅配の人件費はもとより、在庫品の確保においての負担も重いため、採算性が高い商売とはいえず、中小規模ベンチャーが取り組む事業としては不向きと言っても過言ではないだろう。同社は、一般向けのオンライン宅配サービス部門を閉鎖したが、企業向けのビジネス宅配サービスが堅調に伸びていることから、B-to-B型の宅配事業へと全面転業中である。

Urbanfetch
※現在サイトは閉鎖中。

 “Food.com”はレストランのオーダーをオンライン仲介する会社。2000年初旬、レストランのテイクアウト宅配サービスをオンライン上で開始した。しかし、開始して半年も経ってない今年9月にこの事業から撤退している。テイクアウト宅配専門会社との提携が流れたことが原因と言われている。現在、サイト上では、レストランのオンライン予約受付のみのサービスとなっていて、さらにレストラン向けwebサイト構築サービスの提供を中心にしたB-to-B型事業への転換を図っている。

Food.com

 これらの事例に共通することは、撤退の理由はそれぞれあるが、最終的に一般消費者向けビジネス(B-to-C)から法人企業向けビジネス(B-to-B)へと転換を図っているということだ。

 宅配サービスは、商品の直接配送や仲介といった形態に関わらず、一定距離内に、物流に関わる人件費と経費に見合うだけの顧客数を確保できていることが最低限必要となる。例えば、600円のお弁当1食を1人に届けると想定すると、1人あたりの宅配人件費(車両費等含む)は概ね400円/件であることから、単価が1000円以内の商品を個別に宅配していたのでは、利益を得るどころかまともに人件費を支払うこともできないことは明白だ。

 したがってオンライン宅配サービスでは、注文単価の高い商品を売るか、できるだけ近距離圏内に多数の顧客あるいは受注数を確保しない限り事業の継続は不可能であり、この見通しがないままでは撤退を余儀なくさせられることは必至だ。

 国内でもオンラインの弁当宅配サービスが首都圏を中心にスタートしているが、従来、弁当屋は個人宅配ではなく、事業所を対象にした商売を行っている点を忘れてはならないだろう。つまり、宅配サービスが目指すのはB2CではなくB2Bであることに着目しなければならない。


オンライン・クリーニングサービス

 宅配サービスといえば「食品や雑貨の配達」というイメージにとらわれがちだが、B2C→B2Bへの発展を考えるのであれば他にも有望分野を見つけることができる。例えば「クリーニング」がそれに該当する。サービスの知名度を高めるためには、一般消費者を対象にしたサービスも必要だが、稼ぎどころは企業顧客からの大量受注の部分におく。これが実現可能なのがオンライン・クリーニングサービスである。具体例として、オンライン上でクリーニングの注文を受け付けた後、指定された住所まで洗濯物を回収・返却するというユニークなサービスが“PurpleTie.com”というサイトによって、2000年9月から米国にてスタートしている。

PurpleTie.com(米国カリフォルニア・1999年設立)

 Autoweb.com の元CEO、Payam Zamani氏(29歳)が設立したこのサイトは、我々が最寄りのクリーニング店へ洗濯物を届け、期日に回収に行く手間を省いてくれる。利用者は、オンラインで回収日と期日を指定し、洗濯品リストを入力すれば、愛想が良く礼儀正しいドライバーが回収にやってくるというものだ。

 一人暮らしの独身者や主婦が、少しでも自分の時間を持ちたいと思ったならば、PurpleTie.com へアクセスして、まずメンバー登録することだ。登録は無料、直ちにサービスを利用することができるようになる。郵便番号と名前・メールアドルスの登録が完了したら、希望する洗濯物の回収日時と配達日時を入力する。

次に、「My Hamper(洗濯かご)」ページで、洗濯物のリストを入力、クレジットカード決済に必要な情報を入力すれば手続きは完了だ。ただし、この後にオーダーページを印刷して衣類と一緒に洗濯かごに入れておくことを忘れてはならない。指定時間になれば、ドライバーが回収にやってくる。このときに専用の洗濯物入れバッグをもらうことができる。もちろん、自前のバッグでもかまわない。

 用心深い利用者(特に一人暮らしの女性)は、自宅にまで洗濯物を回収に来ることを避けたいと考えるかもしれない。そんなニーズも PurpleTieは見逃していない。“Unattended(アンアテンデッド)”オプションサービスでは、利用者が指定した場所での回収・配達をも引き受けている。ただし、その場所で洗濯物が盗まれたり破損したりしてもPurpleTieは責を負わない。

 それでは肝心の料金体系はどうなっているのだろうか。詳しい価格はサイトで確認することができるが、例えばシャツのドライクリーニングは4.45ドルだ。そして、価格リストに回収・配達料が加味されるのだろうと思うが、その予想は裏切られている。付加料金は、回収あるいは配達日に不在だった場合にのみ4.95ドル加算されるだけだ。ただし、衣類がカシミア、シルク、ベルベット、レザーなどの極めて注意深い取り扱いが必要なものなどは追加料金が必要になる。

価格リストのページ

 さて、これだけではひたすら営業範囲(現在はサンフランシスコ・ベイ地域のみ)と顧客の拡大に奔走するしかないB-to-C型宅配サービスだが、PurpleTie の真のターゲットは法人にある。弁当配達サービスが法人事業所を主要顧客にしているのと同様、ランドリーやクリーニングの需要は法人にもあると見込んで、法人向けサービスを前面に押し出している点に注目だ。「PurpleTie@Work」と名付けられたサービスは、法人顧客を対象に、ドライクリーニング、ランドリー、靴磨きサービスを、割引料金で提供する。

法人向けサービスのページ
月曜〜金曜の午前8時30分から午後6時30分が回収・配達対象時間である。

 PurpleTie.com の事例のように、オンライン注文による宅配サービスでは、顧客のターゲットをどこに定めるかが重要なポイントになってくるといってよい。既に顧客獲得しているオフライン上の宅配サービスをオンライン化するのではなく、新たなカテゴリーでのオンライン宅配を企画するベンチャーならば、法人顧客獲得を最終ターゲットにしたB-to-B型で攻めていくことが有利になることは間違いない。


■JNEWS LETTER関連情報
JNEWS LETTER 1999.10.30
急成長するオンライン宅配受注サービスの現状と攻め方
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2000年11月9日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
 
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