早期退職に拘らないSlow FIREの価値観と引退年齢
海外で起きているFIREムーブメントは、ベジタリアン(菜食主義)の価値観と似ている面がある。ベジタリアンの中でも、卵や乳製品を含めた動物性食品を一切食べない「完全菜食主義者(ヴィーガン)」は、かなりストイックな生活をしなくてはならず、そのルールを守ることでストレスを抱えたり体調を崩したりするリスクもある。
FIREについても、早期リタイアをする年齢や、リタイア後は絶対に働かないことに拘れば、究極の節約生活を強いられることになり、それは幸せなことではない。
そこで、副業は継続しながらリタイア生活を楽しむ「Side FIRE」や、リタイアを実現する年齢には執着せずに、着実な経済的自立を目指す「Slow FIRE」のスタイルも派生してきている。
Slow FIREは、たまには旅行をしたり、友人とランチも楽しむが、ローンで買い物はしない、マイカーにはお金をかけない、できるだけ小さな家に住むなど、ミニマリストとリンクした倹約生活をすることで、20~30代までに、10万~20万ドル(1000~2000万円)の資金を貯められるように努力する。
仮に、35歳の時から元金2000万円を利回り5%で運用できると、複利の力によって25年後(60歳)には、資金が6700万円にまで増える。これを経済的自立の拠り所にすれば、65歳までストレスの多い職場で働く必要性は低くなる。
日本でもFIREの注目度が高まっている要因には、生涯賃金からみたサラリーマンのパフォーマンスが、昔よりも下がっていることも大きい。労働政策研究・研修機構の統計によると、サラリーマンが新卒から60歳まで同じ会社に勤めて得られる生涯賃金は、1990年代には大卒男性が3億2000万円だったが、2018年には2億9000万円にまで下落している。
65歳までの定年延長がされたとしても、賃金体系年金制度の変更により、生涯トータルでみた収入が伸びるわけではない。また、最近では「働き方改革」により、労働時間(残業時間)が短縮されていることも、生涯収入ダウンの要因になる。
一方で、生活に必要な物やサービスの価格は上昇しているため、給与収入と年金に頼る人生設計を根本的に見直す必要性に迫られている。日本では、60~65歳で定年退職した後も、アルバイトなどで生活費を稼がなければいけない世帯が多く、働くことを完全に引退する年齢は平均70歳となっている。これは日本人の平均寿命が長いことも関係するが、欧米と比べても5年ほど長く働くことになる。
こうした人生の標準モデルをできるだけ若い時期からイメージして、自分自身で引退年齢を決められるだけ経済的自立の基盤を作ることが、FIREの目指すところとなっている。
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