超スマート社会の労働市場では人工知能が労働者を管理できるようになる。セールスなど仕事の成果に加えて、顧客の表情、電話やメールの表現などから、接客を担当した従業員の評価をスコアリングすることもできるようになる。
スコアリング化される超スマート社会の労務管理

JNEWS会員配信日 2017/12/25

 超スマート社会では、人間の足りない能力をテクノロジーが補うことになる。
そのため労働市場では、人材に対する評価もシビアになっていくことが予測できる。イメージしやすいのは、Uberなどオンデマンドワーカーの世界に見られるようなスコアリング評価が、一般企業にも普及していくことである。

Uberでは、各ドライバーに対する利用者の評価(5段階)を最重視しており、過去500件の評価が集計されて、5点満点でスコアリング化している。その中で平均スコアが 4.6点を下回った場合には、Uberのドライバーリストから除外される(失職する)仕組みになっている。そのため、ドライバーは特別な教育を受けなくても、顧客に不快感を与えないことに細心の注意を払い、少しでも顧客の満足度を高められるように、自発的な工夫をするようになる。

《Uberドライバーが高評価を受けるためのポイント》

  • 清潔な服装
  • 笑顔での接客、言葉遣い、車内でのコミュニケーション
  • 車内エアコン温度の最適化
  • 顧客の乗車、降車時にはドアを開ける
  • 車両の整備や清掃が行き届いていること(古い車は使わない)
  • 交通法規に従った安全運転、法定速度の遵守
  • 市中の道路に詳しいこと

このようなスコアリングは、顧客からの自己申告やアンケート調査に頼らなくても、AIが客観的に評価できるようになってきている。たとえば、米国で開発されている顔認識アルゴリズムの「Kairos(カイロス)」は、画像に映る人の性別や年齢だけでなく、その時の感情(喜び、驚き、悲しみ、恐怖、怒り、嫌悪感)までを検出し、データを蓄積するほど、機械学習による判定精度を高めていくことができる。この機能をサービス業の会社が導入すれば、顧客の反応を客観的に把握して、接客を担当した従業員の評価に役立てることができる。


電話や電子メールの内容からも、顧客の感情をAIが自動認識することは可能で、それらは「センチメント分析」と呼ばれている。AIによる従業員のスコアリング評価は、上司が行う人事査定のように主観が入り込む余地が無く、すべての社員に対して平等な面はあるが、常に行動がモニタリングされていることのストレスは大きくなる。

新テクノロジーに適応した労働者の育成や再教育は、英国では「Work4.0」としてプロジェクトが進められている。これからは、STEM(科学・技術・工学・数学)に強い人材が価値を高めていく一方で、新たな仕事のスタイルに付いていけない労働者のメンタルヘルスや失業対策は、国がリーダーシップを取り、企業と共に取り組んでいくべき課題になる。

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