JNEWS会員配信日 2014/9/6
米国では1970年代から聴覚障害者のために、テレビ番組に字幕が付けられてきた歴史がある。当時は、映像自体に字幕を挿入する方法で、視聴者側が字幕なしか、字幕ありを選ぶことはできなかった。1980年代からは、字幕のオン・オフを、視聴者が選べるクローズドキャプション方式へと変わり、2012年からは、政府機関がオンラインビデオについても、配信業者に対して字幕表示を求めるようになっている。
字幕制作の基本的な方法は、1分間に250字以上のタイピングができる速記ライターを採用して、映像の音声をテキストに変換していく労働集約的な作業である。
音声自動認識ソフトを利用してテキスト化する方法も開発されてはいるが、現在の変換成功率は80〜90%の精度しかなく、それを手直しする作業が加わるため、速記ライターがタイピングしていったほうが早いと言われている。
もともと、字幕制作の入力者は、裁判速記官としてのキャリアを持つ人材が多く採用されている。近頃では、テレビ局やビデオ会社からの求人案件が加わり、人材不足になっていることから、地域のコミュニティカレッジ(短期大学)に通って、法廷速記のスキルを習得する人も増えている。
カリキュラムを修了して、法廷速記者協会の試験に合格することが、プロの速記者としてのスタートになる。法廷速記者は「Court Reporter(コートレポーター)」と呼ばれ、salary.comによると、平均年収は52,729ドル(約540万円)。同じスキルで、字幕制作(キャプショニング)の仕事もできるようになり、フリーランスとして独立したり、在宅ワークとして関われることも魅力となっている。
■キャプショニングとコートレポーターの仕事を紹介した映像 http://youtu.be/h0i94vA6CQU
欧米の速記者が仕事に利用しているのは、「Stenograph(ステノタイプ)」という特別なタイプライターで、キーボードには24個のキーしかなく、一つの英単語を一打で入力できるように工夫された、特別な文字配列が採用されている。ステノタイプの歴史は古く、75年以上前から法廷速記者に利用されており、パソコンが普及してからもニッチな市場の中でシェアを独占している。
■Stenograph https://www.stenograph.com/
法廷速記や字幕制作の業界には、これまで大企業が参入しておらず、作業を効率的に進めるためのツールやソフトウエアを開発することは、スモール企業にも分がある。映像の再生機器にしても、字幕制作を目的に使うには、テキスト入力の速度に合わせて、再生スピードを変えられるような機能が必要になり、専用に開発していく必要がある。
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2014.9.6
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