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  高齢化社会で、配偶者を亡くした人に対するメンタル面をケアする需要が増えている。未亡人となるのは主に60歳以降の女性で、彼女達に新たな生き甲斐や趣味、友達作りの機会を提供することが、社会サービスとしても必要になってきた。
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急増する未亡人に向けたケア市場と
悲しみ癒すグリーフサービス
written in 2010/7/25

 日本では、葬儀市場だけで年間3兆円の規模が見込まれているが、これはいまの葬儀価格を維持したままで、需要が増えていった場合の試算であり、現実には儀式の簡素化が進んでいるために、計算通りにはならないだろう。そこで今後の葬儀ビジネスは、総合的に“死に対するお世話”をするデスケアサービスへ転換していくことが課題になる。もしも、自分や家族が死を迎えるとして、必要なサービスとして考えられる項目は、以下の5つに大別することができる。

(1)生前にしておくべき準備(葬儀、霊園の予約、遺言書作成など)
(2)死亡時のケア(遺体の納棺、死化粧、防腐処理など)
(3)葬儀の準備〜運営
(4)遺族へのグリーフケア
(5)死後の法的、事務的な手続き(遺品整理、遺産相続など)

この中でも最近注目されているのが、(4)の「グリーフケア(grief care)」という分野で、大切な人を亡くした遺族に対して、悲しみを癒すための精神的なケアサービスのことを指している。欧米では、グリーフケアを目的とした非営利のサポートグループや、オンラインコミュニティが多数存在しており、同じ悲しみを経験した人達とコミュニケーションをして励まし合える場が作られている。

平均寿命からみれば、男性よりも女性のほうが長寿のため、女性の未亡人が増えることになる。米国の統計では、65歳以上の女性が、夫を亡くしている割合は全体の45%にあたる。今後は、米国内で毎年 100万人以上が配偶者を亡くして単身者になると予測されており、彼らの悲しみを癒して、新たな生き甲斐を見つけてもらうことは、社会的にも重要なテーマとして浮上している。

グリーフケアの活動はデリケートな面があるため、ダイレクトに商用サービスとして運営するのは難しいが、非営利のサポートグループを、企業がスポンサーとして資金面で支援することは行われている。

英国の「Cruse Bereavement Care(CBC)」は、配偶者や子供に先立たれた人達に対するカウンセリングや、悲しみから立ち直るためのトレーニング、会員同士が交流できるイベントなどを60年前から行っている団体で、現在では 135の支部がある。非営利の活動だが、有給の常勤社員やパート社員によって運営されており、企業との提携関係を築くことにも前向きである。

英国では、死別者向けのケア事業が「Bereavement Services(ブリーブメント・サービス)として認知されており、CBC 以外でも多数の団体がある。ただしその大半は、活動のための収益モデルを模索中で、それを確立することが課題となっている。そのヒントを一つ挙げると、離婚者やステップファミリー(子連れ再婚者)に対して家族問題のサポートをするコミュニティモデルで採用されているような、専門家がオンラインコミュニティやミーティングで無料のアドバイスをした後、個別の有料カウンセリングへと進むような流れが考えられる。

《家族の悩みを解決するサービスの流れ》

  

また、遺族を元気にすることが、グリーフケアの最終目標であることからすれば、悲しみを癒した次のステップとして、新たな夢や希望、喜びを与えるための旅行ツアー、趣味サークルの運営、友達作りのイベント開催も活動のテーマとなり、この領域では企業との提携ビジネスも築ける可能性が高い。

これまでは、夫や妻と死別した人達に対するケアやサービスを“市場”としては捉えてこなかったが、高齢社会ではそこに該当する人口が無視できない規模に増えていくことから、非営利、営利を問わずに何らかのサポートをしていく必要がある。

《配偶関係からみた日本の人口分布(2005年時点)》

  

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この記事の核となる項目
 ●提携と再編が進む葬儀業界の構造
 ●イオンが参入する葬儀ビジネスの仕組み
 ●脱宗教化する故人供養の方向性
 ●遺族の悲しみを癒すグリーフサービス
 ●デジタル社会における新たな故人の供養スタイル
 ●故人メモリアルサイトの仕組みと収益構造
 ●死への準備とお世話をするデスケアビジネスの業界構造
 ●ホームページを集客の要とする葬儀業者の工夫とオンライン戦略
 ● 亡くなった後の遺志を残すオンライン遺言サービス


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