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欧米の富裕家族から学ぶ 家事代行サービスの種類と活用方法 |
written in 2007/7/5
自分の老後は誰に面倒を見てもらうのだろう?と漠然とした不安を抱えている人は多い。昔とは家族の関係が変わってきている中で、自分の子供に介護を押しつけることはできないし、老人ホームに入居するというのも寂しい。できることなら住み慣れた自宅で老後を暮らしたいと願うが、頼りにしていた介護サービス業者もどうやら経営が怪しいらしい。日本の介護問題は暗礁に乗り上げた形だ。
2000年に始まった介護保険制度は早くも破綻の兆しがみえてきている。介護保険は40歳からすべての国民が保険料を払うことが義務付けられているが、自分の老後に必ず介護保険が利用できるというわけではなく、その時の健康状態が審査されて“要介護”の認定を受けた場合にのみ給付される。実際に介護保険の給付を受けている人は、すべての高齢者(65歳以上)の中で16%に過ぎない。つまり6人の中で5人の高齢者は、真面目に保険料を払い続けていても、公的介護サービスを自分が利用できない立場にある。もちろん健康であるからこそ要介護の認定を受けられないわけだが、「介護保険料を払い続けること」が「自分の老後対策」とはイコールではないことがわかるはずだ。
介護業者の側にしても、国の介護保険制度に頼った経営はコムスンの例に限らず危険である。たしかに介護保険の指定業者となれば、介護サービス料金に対する利用者の負担は1割で、残り9割は国からの保険金によって賄われるために医者と同じような仕組みで儲けられるという思惑がある。しかしそこには二つの落とし穴が隠れている。一つは、役所が定める保険点数の見直しによって、介護業者の経営状況も大きな影響を受けてしまうこと、もう一つは介護保険を使える“要介護者”は、高齢者の中でも特に手のかかる客層に集約されるため、そこだけを顧客対象にしていたのではサービス担当者の負担が重く、それが人材募集や人件費に影響してくるのだ。介護保険の適用を抜きにして考えれば、高齢者サービスの中で利益率が高いのは元気シルバーに対する軽度の“お世話”である。
「高齢者のお世話サービス」を一つの市場として捉えるなら、一人の顧客寿命はは65歳頃から90歳を超えたあたりまでの25年間という長期にわたるものだ。その中で重度の介護が必要なのは最後の数年で、それまでの元気な期間は自宅の掃除や食事の支度をしたり、買い物に付き添ったりと、ごく一般的な家事代行サービスが中心になる。言い換えるとこれは「家政婦さんの仕事」であり、今後は“家政婦”に関わるサービスが有望であることに気付く。海外では自宅に家政婦(メイド)を雇う生活様式が一般的な国もあるが、日本では一般家庭が家政婦を雇うという習慣はみられない。しかし子供が親の介護を放棄してしまい、保険制度も頼りにならないという状況の中で、家庭内の介護問題を“解決”とまではいかなくとも、負担を軽くするには家政婦サービスをもっと普及させるしかない。
そこで話を家政婦業界に振ると、じつは高齢者以外の層で家政婦サービスに対する需要が高まっているという。それは意外にもメイド喫茶の人気から端を発しているもので、本物のメイドサービスへの問い合わせが増えているというのだ。その利用層は独身男性に限らず、母子家庭や共働き世帯などにも及んでいる。愛想がよくて一生懸命働いてくれるメイド(家政婦)が自宅に来てくれたら便利ということに気付き始めたのは、メイド喫茶がブームになってからのことである。不覚にも日本の介護業界が学ぶべき課題は、メイド喫茶サービスの中に潜んでいる。
(女性のための起業テーマ一覧へ)
●介護事業の崩壊で見直される家政婦サービス
●家政婦業界の仕組みと収益構造
●欧米の富裕家族から学ぶ家事代行サービスの種類
●伝統ある欧米の富裕家族向け家事代行サービス
●家政婦を養成するためのスクール事業
●介護保険のない米国で成長するシニアケアサービス
●メイド喫茶に見習う介護サービスのコンパニオンシップ
●“人”に依存したパーソナルケアサービスの本質とは
●介護ビジネスのロングタームとショートターム
●メイド喫茶から介護業界が学ぶべきこと
●一人っ子家族の増加が崩壊を招く家計の収益構造と介護問題
●介護用品レンタル市場における価格差のカラクリと業界構造
●介護タクシー業界にみる個人開業ドライバーの元締めビジネス
JNEWS LETTER 2007.7.5
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