資産凍結から逃れる暗号通貨で形成される地下経済
ウクライナ侵攻に対して、欧米がロシアに対して行う経済制裁では、ロシア政府と関係が深い個人の富裕層もターゲットになっている。
ロシアでは、社会主義から資本主義に移行する中で、旧ソ連時代の利権を引き継いだ「オリガルヒ」と呼ばれる超富裕層が生まれた。米国のバイデン大統領は、プーチン政権とオリガルヒの腐敗した関係が、不正な富を生み出していることを指摘して、EUと連携する形で、彼らとその家族が西側諸国で保有する、不動産、スーパーヨット、プライベートジェットなどの資産を追跡して差し押さえるための「Klepto Capture」という特別チームを結成している。
EUでも、経済制裁を与えるロシア人超富裕層をリストアップして、EU地域に保有する資産の凍結と渡航禁止令を出している。これら懲罰的な制裁と金融暴落により、「世界で最も裕福な500人」にランキングされているロシア人の22人は、今年に入ってからの2ヶ月間で合計で830億ドル(9.5兆円)の資産を失ったと報じられている。
■世界で最も裕福な500人ランキング(Bloomberg)
このような富裕層の資産が凍結されることは、ロシアに限った話ではなく、政治体制の変化や地政学的リスクによって、どの国にも起こりうるリスクとして捉えられるようになっている。そこで富裕層の中では、資産の一部を凍結されにくいものに逃避させる行動は加速していくことが予測される。具体的には、金(ゴールド)の実物や高級時計は、カバンの中に入れて運びやすく、どの国でも現金化しやすいことから、有事の際には人気化する傾向がある。
また、ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨は、ブロックチェーンに取引履歴が記録されるため、当局の追跡から完全に逃れられるわけではないが、ネットに接続されていないハードウェア・ウォレットに保管すれば、国境を越えて持ち出すことができる。暗号通貨はリスク資産と捉えられているため、有事の際には売られる傾向がある一方で、価値が暴落する法定通貨からの乗り換え需要が増えている。
世界から経済制裁を受ける事例は、ロシアが初めてではない。イランは国連が定めた国際ルールを破って、秘密裏に核開発を行っている事実が発覚したことから、イラン製品の輸入禁止と、イランの金融機関をSWIFTから外して、国際決済ができないようにした経済制裁が、国連の決議によって2012年から行われている。
これによって、イランは他国と貿易をすることができず、外貨を稼げなくなったわけだが、水面下では、豊富な原油資産を活用した暗号通貨のマイニング事業を新たな資金源にしていることが明らかになっている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・ウクライナ危機とエネルギー問題
・天然ガス利権における米国の立ち位置
・ロシア経済制裁による金融暴落の道筋
・ロシア制裁で影響力を高める人民元決済
・国際化する人民元決済の取引ルート
・欧米で結成されるロシア富裕層の追跡チーム
・ロシア富裕層が資産凍結に備えた動き
・経済制裁で成長する暗号通貨の地下経済
・イランで産業化される暗号通貨マイニングの仕組み
・地下経済で繋がる制裁対象国同士の繋がり
・コロナ収束期に加速する新型インフレの特性
・シェールガス革命の影響とクリーンエネルギー動向
・金融危機と逆相関で価値が変動する金地金の買い方
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2022.3.5
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