ヘッジファンドのAI分析を意識した投資家の戦術
ヘッジファンドや投資銀行の関心事は、新型コロナウイルスの拡大が各国の経済に与える影響と、収束に向かって経済活動が再生していくタイミングを予測することである。そのためのAI分析に有効なデータセットへの需要は急速に高まっている。
具体的には、感染の拡大に伴い、消費者の行動がどのように変化しているのかを携帯電話のGPSから把握できるデータや、中国を起点としたサプライチェーンの稼働状況を確認できるデータ、企業の雇用減少を監視できるデータなどへのニーズがある。
2011年にニューヨークで創業した「Thasos(タソス)」は、携帯電話の位置情報から消費者の行動分析をしている会社で、特に小売業の商圏分析を得意としている。携帯会社から提供される匿名データを元に、特定店舗の来店客数、滞在時間、移動距離、他店への買い回り順路などを可視化することができる。同じショッピングセンターの中でも、来店客が多いテナントと、そうでないテナントを判別することも可能だ。
この分析データを活用すれば、商業施設の来店者数から、特定地域でコロナウイルスの感染数が、1週間後はどの程度増えていくのかを予測したり、ウイルスの収束で、来店客が戻り始めている店舗の識別をしたりできる。Thasosでは50社以上のヘッジファンドに対して、このような位置情報データを提供している。
さらに、ヘッジファンド業界で40年の投資経験を持つ、元ファンドマネージャーが2017年に創業した「DataTrek Research」では、中国主要都市の大気汚染データと、交通渋滞の発生状況を分析して、経済活動が再開するシグナルを発見しようとしている。
この分析で、情報ソースとして活用されているのは、世界57ヶ国、416都市の交通渋滞情報を収集している「TomTom NV」というオランダでGPSデバイスを開発する企業が提供する、交通渋滞のデータである。
同社のGPS製品は、世界の自動車メーカー(日本ではトヨタ、レクサス、マツダ、スバルなど)に組み込みデバイスとして採用されており、車載GPSから収集されたデータを匿名化して、各都市の渋滞状況を時系列で把握できるようにしたのが「TomTom Traffic Index」という指標である。それと、各都市の保険局が発表している大気汚染データを組み合わせることで、各都市の製造業や物流がコロナショックから立ち直るタイミングを掴むことができる。
このように、現在のヘッジファンド業界は、代替データの活用により、各国の経済指標や企業決算が発表されるよりも早いタイミングで、実際のビジネス動向を把握することで、高速売買に活かしている。同じ株式市場でトレードをする個人投資家にとっては、これらの状況を理解した上で戦術を考えていく必要がある。
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