顔認証エンジンの実力と防犯ビジネスへの活用と問題点
JNEWS会員配信日 2018/4/17
2014年の設立で、香港・北京・深センに拠点を置く「SenseTime(センスタイム)」は、顔認証システムを専門に開発する会社で、未上場企業ではあるが、現在の企業価値は30億ドルと評価されて、2018年4月にはアリババグループが6億ドルの出資を行っている。同社は、スタンフォード大学やMITなどで博士号を取得している人材を大量に採用することで、顔認証やディープラーニングに関する600以上の特許を取得している。
SenseTime社の顔認識システムは、金融機関やスマートフォンの認証システムに使われている他、屋外に設置されたカメラの不鮮明な映像からでも、人間の顔を1000分の1秒以内に検出、顔の特徴となるキーポイントを分析して、データベースに登録されている人物を識別することができる。また、映像に映る服の特徴から、探索している人物を検出することも可能だ。
2,500万人の人口を抱える中国広州の公安局では、SenseTimeのシステムを導入することで、監視カメラが撮影した犯罪現場の映像と、公安局のデータベースに登録されている写真を照合して、2,000人以上の容疑者を特定、その中から 800人以上を逮捕することに成功している。また、他の自治体では、行方不明になった高齢者の探索に導入することで成果を出している。SenseTime社は、400以上のクライアントに顔認識システムを提供しているが、その中の主要顧客は地方の自治体、警察、公安局などである。
SenseTimeは、世界的な半導体メーカーのNVIDIA(エヌビィア)やクアルコムと業務提携をする形で、半導体チップの中に顔認識のAI機能を組み込み、監視カメラのメーカーが関連製品を開発しやすい環境を整備している。
NVIDIAが構築を進めている「Metropolis」は、政府施設、公共交通機関、商業ビル、幹線道路などに設置されている監視カメラの映像を分析するためのプラットフォームで、犯罪者、行方不明の高齢者、迷子の子どもなど、探索中の人物を90%の精度で検出することができる。2020年までには、世界で10億台以上の監視カメラがネットワークで繋がることが予測されおり、NVIDIAはその映像分析でも主導権を握ろうとしている。
監視カメラ市場に対しては、半導体チップメーカー、カメラメーカー、顔認識技術の開発会社、それぞれ立場から世界シェアの獲得を狙っており、相互の提携関係も進むと見られている。ただし、この分野は、一つの系列に世界の需要が集約されないという見方もある。それは、個人情報を守るセキュリティ面への配慮で、中国企業の製品は避けたいと考えている機関は少なくない。中国Hikvision社製のネットワークカメラに対しては、不正にアクセスできる脆弱性が発見されており、米国土安全保障省では製品の型番を指定して、そのまま使い続けることへの警鐘を鳴らしている。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・中国がリードする防犯・監視カメラ市場の動向
・顔認証カメラシステムの方向性と課題
・日本発、顔認識システムの実力と活用範囲
・治安重視とプライバシー保護の逆相関について
・防犯カメラ市場の業界構造と流通ルート
・監視カメラメーカーが形成する代理店制度の仕組み
・異業種からの防犯カメラ市場参入の視点
・防犯強化の補助金を活用した監視カメラの売り込み
・入札方式で獲得する公共施設の監視カメラ設置案件
・自動運転テクノロジーが形成する新たな自動車業界の組織図
・公共機関5千団体へ防災用品を売り込める入札ノウハウの開拓
・世界標準化する「子どもの留守番禁止」ルールと安全対策市場
・知的財産として浮上する営業秘密の価値とスパイ対策市場
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2018.4.17
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