身内で広がる医療クラウドファンディングの仕組みと問題点
国民皆保険が整備されていない米国では、個人が病気をした時の治療費を調達する方法としても、クラウドファンディングが活用されるようになっている。これは「医療クラウドファンディング(MCF)」と呼ばれる分野で、2018年頃から急速に成長しており、2020年の時点では、米国内のクラウドファンディング市場全体の1/3は、医療費に関する案件と言われている。
世界最大級のクラウドファンディングサイト「GoFundMe」の中でも、医療費の調達(寄付)を目的とした案件は、2011年には160万ドルだったのに対して、2014年はその100倍の1億5000万ドル、2016年には6億5000万ドルまでに急拡大している。1件あたりの資金調達額(中央値)は38,204ドル(約420万円)で、ガンの手術や代替療法で支援を求める案件が多額の資金を集める傾向があるが、最近では、心臓病や精神疾患の治療など用途が多様化していることに加えて、2020年以降は新型コロナの治療費でも支援を求めるケースも増えている。
ただし、医療費の寄付をするのは、患者の家族、親戚、友人、会社の同僚、SNSで繋がっている仲間などが主体となっている。これまでは、高額の医療費を身内同士で支え合う仕組みが存在していなかったが、クラウドファンディングは身内や親しい仲間からの寄付を募るためのプラットフォームとして活用されている形だ。
シカゴ大学の世論調査センター(NORC)が行った調査では、2020年のコロナ禍で、米国成人の4500万人が、医療費目的のクライドファンド案件(約6100万件)に寄付をしている。その中で、近親者への寄付は4500万件、見知らぬ相手への寄付は1600万件となっている。
■出所:シカゴ大学NORC
公的保険制度が未整備の国ほど、医療クラウドファンディング(MCF)の市場は伸びているが、国民皆保険制度がある英国でも、保険適用外の先進医療の利用、海外渡航しての手術、療養中の家族の生活支援などの目的でのニーズが高まっている。
皆保険制度が充実している日本でも、万が一の事故や病気に備えた民間医療保険の加入率は73%と高いが、クラウドファンディングという選択肢が使えると、医療保険は不要という考える人が増えてくる可能性はある。
しかし、身近な人達に対するクラウドファンディングは「善意の前借り」であり、病気の度に利用することは難しいことや、寄付してもらった恩をどのように返していけば良いか、という心理的な負担もある。クラウドファンディングによる医療費の調達は、欧米でも始まったばかりで、案件の内容や寄付の状況から、市場の特性が分析されているところだ。
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