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世界に分配されるワクチン流通構造と集団接種の進め方

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JNEWS会員配信日 2021/2/1

 英国では、新型コロナワクチンの接種を受けられる場所として、各地域で集団接種センターの整備が進められている。年齢や持病の状態などによって決められた優先順位により、自分の順番が来ると、保険局からの通知が届き、電話かオンラインで予約をした後、ワクチン接種を受ける流れとなっている。予防接種センターとして使われているのは、教会、スポーツスタジアム、競馬場、大講堂などで、1週間で数千人規模の接種が可能な大規模施設が選定されている。

ファイザー社のワクチンは、バイアル(注射剤を入れる容器)1本に5人分の注射剤が入っており、バイアル195本分が1箱として、マイナス75度状態を保ちながら冷凍輸送される。接種会場ではワクチンを解凍して、生理食塩液で希釈した後に注射をする。

つまり、ワクチン1箱につき975人分の接種ができるが、一度解凍されたワクチンは保冷ボックスとドライアイスを併用しても保存期間は5日以内、針を刺したバイアルは6時間以内に使い切らなくてはいけないため、注射剤のロスを減らすためにも、接種センターは大規模ほど効率が良い。ただし、現場でバイアルから注射剤を抽出しなくてはいけないことから、衛生面、安全面の対策がとりやすく、かつ、3密になりにくい会場施設が求められている。

■英国集団接種センターのニュース映像(CBS NEWS)

《ファイザー社ワクチン輸送経路》

 日本でも、国からの指示により全国の自治体が集団接種の準備を進めており、大規模な医療機関の他に、体育館などが会場として検討されている。海外と同様に、ワクチンは複数回分が1バイアルとして供給されるため、1会場での接種人数はできる限り多くする必要があり、一度に供給されるワクチン(約1000回分)を10日程度で接種できる体制が求められている。

【是正されるワクチン国際流通ルート】

 新型コロナの感染拡大が広がった2020年初旬から中旬にかけては、資金力のあが、ワクチン開発をする製薬会社に対して事前購入予約を入れて、大量調達しようとする事態が起きた。現在の先進国で集団接種されているのは、2020年の夏頃までに先行予約されたワクチンである。

それでは途上国にまでワクチンが行き届かないことから、2020年後半からは、世界保健機関(WHO)と、貧困国向けの予防接種プログラムを展開するGAVIアライアンスなどが主導して、全世界の国々に対して平等にワクチンを分配するための「COVAXファシリティ(COVID-19 Vaccine Global Access Facility)」という仕組みが構築されている。現在は日本、米国、欧州の富裕国を含む190か国以上がCOVAXに加盟しており、新型コロナワクチンの公式流通ルートになっている。

COVAX Facility

《COVAXのよるワクチン流通の仕組み》

現在のワクチン流通は、COVAXと各国の政府が管理しているため、健康リスクの高い高齢者の優先順位が高く、20~40代の現役世代は後回しになっている。ただし、警察官、消防士、教員など公共性が高くて、人と対面する機会の多い職(主に公務員)には高い優先順位が与えられて、民間企業の従業員には優遇制度が無いという、不平等も起きている。

そのため、大企業や業界団体の中では、政府に対してロビー活動を行うことで、従業員向けのワクチンを獲得しようとする動きもある。米国の航空業界では、予防接種実施諮問委員会(ACIP)に対して、航空労働者をワクチン接種の優先リストに含めることを求めている。その他に、米国のレストラン業界やフードデリバリー業界でも同様に、政府に対してロビー活動を行っている。

ただし、COVAXによるコロナワクチンの供給管理は永続的なものではなく、ワクチンの生産量が増えてくれば、企業が一括購入できる民間ルートが形成されることも予測されている。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・世界に先駆けたイスラエルのワクチン接種
・大量ワクチン接種の方法と問題点について
・英国のワクチン接種状況について
・集団ワクチン接種センターの仕組み
・日本で準備されるワクチン接種体制
・国際的に是正されワクチン流通ルート
・ワクチンパスポートの仕様と開発動向
・航空業界に導入されるデジタルヘルスパス
・在宅勤務からの復帰で求められる従業員ヘルスパス
・中国に依存する医薬品のサプライチェーン構造
・8割を占めるコロナ軽症者向け遠隔診療サービスの開発
・アフターコロナに訪れるニューノーマルのビジネスモデル

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