慢性病の重症化を防ぐ成果報酬型ヘルスケアサービス
健康改善の成果によって報酬を支払うヘルスケアサービスは、各自治体でも導入され、費用対効果の検証が行われている。具体例として、神戸市では2017年7月~2020年3月の期間で「糖尿病性腎症等重症化予防事業」を成果連動型で実施している。このプロジェクトは、広島市に本社がある「DPPヘルスパートナーズ」が委託事業者となり、神戸市内で糖尿病から腎症のリスクがある患者(国民健康保険加入者の中から約100人を選定)に対して、看護師や保健師などの有資格者が、電話で食事や運動面などの健康指導を6ヶ月にわたり行う。それにより、人工透析へ移行する患者数を減らすことを目的としている。
人工透析患者にかかる医療費は、1人あたり年間で500万円と非常に高いため、自治体としては健康指導のコストをかけても、糖尿病からの重症化を予防したいと考えている。
神戸市がDPPヘルスパートナーズに支払う委託事業費には約2,400万円の予算が設定されているが、この資金は、健康指導プログラムが終了した後に、第三者機関による生活習慣の改善効果が評価され、成果報酬が段階的に支払われる契約になっている。つまり、成果が出なかった時のリスクは、委託業者が背負うことになり、全く成果が出なければ「報酬はゼロ」ということも想定されるが、それでは人件費などの原価を回収できないため、最低限支払われる保証額が設定されている。
この最低保証額を担保として、銀行や投資家は委託事業者に対して資金提供を行うが、神戸市からの成果報酬が満額支払われた場合には、年率で5%前後のリターンが得られるように設計されている。
■糖尿病性腎症等重症化予防事業について(神戸市)PDF
【大腸がん検査受診向上プログラム】
また、八王子市では、在宅で行える大腸がん検診キット(便検査)の普及に力を入れているが、その受診向上プログラムを成果報酬型で外注している。これは、国民健康保険加入者の中で、検診を毎年受けていない人を対象に、委託業者がAIによる受診勧奨効果の高い層を12,000名抽出して、検診を勧める印刷物を作成、郵送することで、受診率を高めるプロジェクトである。
委託業者に対する委託料は、大腸がん検診の受診率が15%以上、精密検査(内視鏡)の受診率が79.0%以上という目標値をクリアーした場合と、検診による早期がん発見者の数に応じた成果報酬が、それぞれ支払われる契約(最大で976万円まで)になっている。
八王子市の医療費データによると、大腸がん患者の治療費は平均252万円だが、検診経由により早期発見できた場合には、65万円で済んでいる。そのため検診による医療費削減額は、患者1人あたり187万円(252万-65万円)となり、上記の契約条件により、受診向上プログラムを行うことの費用対効果は実証されている。
■成果報酬型大腸がん検診向上プログラム(八王子市)
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