調剤薬局や介護の業界は、 公的保険の報酬点数によって施設数の需給バランスが調節されている。全国の調剤薬局は既に飽和状態にあり、調剤報酬の引き下げによる総量規制が行われている。それに伴いM&Aによる業界再編が加速(JNEWSについて
調剤薬局・介護業界の総量規制とM&Aによる業界再編

JNEWS会員配信日 2018/6/6


 中小ビジネスのM&Aは、不動産投資と似ている面がある。物件の売り手と買い手にはそれぞれの思惑があり、オーナーチェンジが成立している。既に固定客が確保されていて、毎月の収入が安定しているビジネスは、購入案件として人気があるが、現オーナーにとっては、この先も市場が成長していくとは限らないという読みもあるため、売り案件が出てくるわけだ。

その点で、国の公的保険制度に基づいて月額報酬が安定している、医療クリニック、調剤薬局や介護ビジネスは、M&Aによる業界再編が加速している。

調剤薬局の売上は、処方箋の取り扱い件数によって毎月安定している。内閣府の調査によると、院外処方箋1枚あたりの平均単価(調剤医療費)は約1万円で、その中の70%が薬剤費、技術料が30%となっている。たとえば、1日に40件の処方箋取り扱いがある調剤薬局では、技術料だけで毎月およそ 300万円の収益が見込める。

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しかし、これは国が医薬分業を進める(調剤薬局を増やす)ためのインセンティブとして与えられてきた単価設定である。既に調剤薬局の数は飽和状態に到達したという見方もあることから、今後は調剤報酬の見直しが行われると中小の薬局は経営が苦しくなる。

その一方で、医薬品は大量に仕入れるほど、メーカーからの仕入れ原価は安くなるため、大手の調剤薬局チェーンにとっては、M&Aによって店舗数を増やすことで、薬剤費の利益率(薬価差益)を高めることができる。また、スマホアプリによる処方箋の受付や宅配など、新サービスの導入で顧客を増やせる見込みもある。

《処方箋1件あたりの収益構造》

 介護ビジネスも同様で、介護保険制度によって売上は安定しているが、3年に1度の見直しが行われる報酬改定の影響を受けやすい。高齢化社会で需要が伸びる市場であることは間違いないが、国によって利益率はコントロールされている。

そのため、介護ビジネスで収益を伸ばしていくには、施設数を増やしてスケールメリットを追求していくしかない。しかし、施設の種類によって「国がこれ以上は定員数を増やさない」という総量規制がかけられており、大手の介護業者や異業種からの参入組みは、新規で施設を開設するのではなく、既存の施設をM&Aによって取得する動きが高まっている。

一方、既存の介護施設では、利用者がいる限りは廃業することは難しい。そのため、介護報酬の引き下げや、介護人材の不足により経営が厳しくなってくれば、「事業承継」という形で手仕舞いするのがベストな選択肢になる。経営者の中には、同じ介護業界の中でも、利益率が下落傾向の業態施設を早期に売却して、介護報酬が高く設定された新業態のサービスに乗り換える動きもみられる。

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