3Dプリンターで製作するカスタム補聴器の潜在市場
JNEWS会員配信日 2018/11/26
3Dプリント技術の活用は、医療分野でも期待されている。歯科治療の分野では、義歯を製作する工程で3Dプリンターの導入が検討されていたり、整形外科の分野でも3Dプリンターで、患者の体格に合った人工関節や人工骨を製作する研究も行われている。ただし、人体に埋め込む医療用の部材は、安全面の検証から、国の承認を受けるのに時間とコストがかかり、中小業者のビジネステーマとしては難しい。
そこで、非医療のカテゴリーとして注目されているのが音楽用のイヤホンである。
耳の形状は、人それぞれ異なるため、イヤホンを長時間装着していると、耳が痛くなったり、頭痛の原因になったりすることがある。
歯科用の3Dスキャナーメーカーでもある、デンマークの3Shape社が開発したのは、「Phoenix」という耳内部の形状を計測できるハンディ型の光学スキャナーである。Phoenixは、耳にレーザー光線を当てることで、外耳道の正確なサイズを立体的に測ることができる。そのデータを元に3Dプリンターを使えば、耳の形状に合ったイヤホンを製作することができる。
この技術に対しては、3DプリンターメーカーのFormlabs社が業務提携をして、オーディオショップや家電販売店の店舗で、顧客の耳をスキャンして、カスタムイヤホンのオンデマンド生産を行うことを発表している。
これまでにも、プロの音楽家やサウンドエンジニア向けにカスタムイヤホンの販売を行う店舗はあったが、専門のスキルを持つスタッフが耳の採寸を行う必要があり、イヤホンの価格は10~30万円の設定になっている。しかし、3Dスキャナーと3Dプリンターを使う方式であれば、一般の店員でも耳の採寸を行えるため、カスタムイヤホンの価格設定を下げて、一般の音楽愛好者にまで販売層を広げていくことができる。
さらにその先には、カスタム補聴器の市場が見えてくる。日本補聴器工業会の調査では、難聴の症状を感じている人の数は、日本では自己申告だけでも1430万人存在している。しかし、目立ちすぎる補聴器には抵抗感があることから、実際に補聴器を使用しているのは200万人(潜在顧客の14%)に過ぎない。難聴の悩みを抱えているのは、高齢者だけでなく、65歳以下の層でも3~10%が該当している。
補聴器には、「耳あな型」と「耳かけ型」の2タイプがあるが、安い製品は雑音が入ったり、ハウリングを起こしやすいため、購入者の中では15~30万円の機種が人気となっている。購入方法としては、聴覚障害者として身体障害者手帳を所持している人は、価格の9割を国や自治体に助成してもらえる制度があるが、大半の人はこの条件には該当しないため、自費で購入するのが一般的である。
補聴器は約5年で買い換えの必要が生じる消耗品ではあるが、高性能でフィット感が高く、外観デザインにも抵抗感が無い製品であれば、15~30万円の価格帯でも購入者を獲得できる潜在市場がある。
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