JNEWS会員配信日 2014/7/24
これまでの医療保険は、同じ組織やグループの加入者全体で、医療費の支払いを分担してきたわけだが、最近では、電子カルテのビッグデータ分析により、高額の医療費を使うのは、加入者の中でも一部の人達(1〜5%)であることがわかってきた。さらに、高額医療の内容まで分析することで、医療費を抑える方法が研究されはじめている。
米国の医療情報会社「IMS Health」のデータ分析によれば、保険加入者の中で、上位5%の人が、50%の医療費を使っている。つまり、健康な95%の保険加入者で5%の重症者を支えるような構図になっている。
重篤な病気ほど、医療費が高額になるのは仕方がないが、同じ病気でも、患者によって、医療費に大きな差が生じていることが、ビッグデータ分析によりわかってきた。
その理由は、投薬の内容や、通院・入院の回数が必要以上に多いためで、その中から“過剰な治療”として浪費されている部分を省くことで、医療の質は落とさずに、医療費を下げることが可能になる。たとえば、米国の糖尿病患者、一人あたりの医療費は、平均で 1.1万ドル/年だが、上位1%の患者は、一人で10万ドルもの医療費を使っている。
《医療保険の給付分布状況(米国)》
・1%の加入者………医療費総額の25%を給付
・4%の加入者………医療費総額の25%を給付
・45%の加入者………医療費総額の47%を給付
・50%の加入者………医療費総額の3%を給付
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※出所:IMS Health
日本でも、年間で38兆円もの国民医療費が投じられているが、その中の無駄遣いを発見して、ローコストな治療方法に置き換えることが求められている。具体策として、全国の病院が、安価なジェネリック医薬品(後発医薬品)を使うことでも、医療費を大幅に下げることができるが、日本のジェネリック利用率は、先進国の中で最も低い。
《世界のジェネリック医薬品利用率》
・米国…………89.4%
・フランス……35.5%
・ドイツ………71.1%
・英国…………67.4%
・日本…………22.8% ←厚労省は60%まで引き上げる目標
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※出所:厚生労働省
しかし、医薬メーカーや病院にとって、医療費の節約は“収入の減少”に繋がるため、積極的には行いたくない。そこで、無駄遣いのお目付役となるのが、地域の自治体や、企業・団体が運営する健康保険組合の存在になる。
日本国内でも、ビッグデータ分析で医療費を抑制しようとするモデルは登場してきている。全国の中でも高齢化率が高い、広島県呉市では、市民が病院で治療を受けた診療報酬明細書(レセプト)の情報をデータベース化して、内容の詳しい分析を行ってる。
そこで、同じ病気で複数の病院へ頻繁に通っていたり、薬をもらいすぎている患者のリストが抽出されて、患者宅を訪問して、適切な医療サービスの受け方を指導している。病院側は、医療費の抑制に非協力的なため、患者側を指導していくことが主体になる。
今後は、他の自治体や保険組合でも、保険加入者のレセプトを分析・点検して、医療費の支払いを軽減していこうとする動きがあることから、関連のデータ分析システムの開発には商機が見込まれている。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です→記事一覧)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●健康保険組合の採算と運営モデル
●若い業界ほど好採算になる健保組合の特徴
●医療費負担を下げるためのビッグデータ分析
●健保組合が提供する健康インセンティブとは
●従業員向け健康プログラム開発への視点
●安定した雇用が期待できる医療・健康分野の新職種と専門人材
●医師との提携により価値を高める健康ビジネスの立ち上げ方
●罰金と報酬で刺激するスポーツクラブのモチベーション向上策
●世界の禁煙規制が外食業界に与える影響と生活スタイルの変化
●励まし合いながら生活改善するソーシャルヘルスの潜在市場
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2014.7.24
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