JNEWS会員配信日 2015/2/3
メディカルツーリズムの市場は黎明期にあたるが、いま世界で 800〜1200万人が自国以外の医療サービスを受けるための渡航をしている。その中の 100万人は世界最先端の医療を受けられる米国へ向かっている。
その一方で、米国の医療費は非常に高いことから、米国民の中では、特別な治療や手術が必要な時には、海外の病院で施術を行うケースもある。出国先は、受診内容によっても異なるが、シンガポール、タイ、マレーシア、メキシコ、イスラエル、ハンガリーなどへ行けば、米国内よりも30〜80%安い費用で手術などを受けられる。
《海外メディカルツーリズムが成り立っている診療例》
- 健康診断、人間ドック
- 美容整形
- 歯科治療
- 心臓手術(移植を含む)
- ガン手術
- 不妊治療
- 腰や関節の手術
- 減量のための治療
一例として、心臓のバイパス手術を米国の病院で受けると 8〜10万ドル(約940〜1200万円)の費用がかかるが、シンガポールやタイの病院であれば 1〜1.5万ドル程度で同じ手術を受けることができる。
この差は非常に大きいため、従業員の医療費を負担している、企業の保険組合や保険会社が主体となって、海外へ患者を送客することを試みている。保険加入者にとっても、海外での手術例が増えることは、月々の保険料を安くできる利点がある。
シンガポール、タイ、マレーシアなどでは、先進国からのメディカルツーリングを外貨獲得の国策として、病院の環境やスタッフの充実に力を注いでいる。一般的に、メディカルツーリングの受け入れ先は、私立病院に限られているが、シンガポールでは、国費で運営される公立病院でも、他国からの医療旅行者を受け入れている。
しかし、患者側の「新興国で医療(手術)を受けること」への印象はあまり良くないことが、判明してきている。
米国の「Hannaford」というスーパーマーケットチェーンでは、従業員の健康保険プログラムとして、米国内で膝や腰の手術を受けるのではなく、同様の手術をシンガボールの病院で安く受けることができるようにした。しかし、海外で手術を受けることには抵抗があり、実際の利用者はほとんどいなかった。
高度な医療設備やスタッフを備えているとはいえ、新興国の病院には、信頼や安心感を与えるブランド力で劣る面があるのは否めない。実際の利用動向をみても、アジア新興国の高品質な病院によるメディカルツーリングでは、中東や同じアジア圏の富裕層が主な利用者になるという見方がされている。
米国では、新興国への患者送り出しが上手くいかないことへの反省から、国内の地方都市で、安い・混雑していない病院を探す「ドメスティック・メディカルツーリング」へと回帰する動きが出始めている。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です)
■JNEWS会員レポートの主な項目
●医療費を削減するメディカルツーリングの長短
●国内版メディカルツーリズムへの回帰
●日本版メディカルツーリズムと高度先進医療
●求められる訪日外国人への医療対応サービス
●医療通訳者への需要と受発注ルート
●遠隔通訳サービスの必要性について
●医師との提携により価値を高める健康ビジネスの立ち上げ方
● 15年後に切迫した労働人口激減と外国人就労者招聘マーケット
●8割が赤字に陥る健康保険組合の運営立て直しモデルの着眼点
●エリート外国人を顧客ターゲットにした日本経済の再生モデル
●医療格差を容認した米国健康保険の仕組みと長寿への人生プラン
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2015.2.3
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