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世界的に拡大するスパビジネスと 寂れる温泉旅館の再生プラン |
written in 2007/3/19
日本人の風呂好きは古くから知られていることだが、東京電力が行ったアンケート調査によると、毎日の入浴を欠かさない人が全体の約8割、その中で二十分以上の長い入浴時間をかけている人が約7割にもなる。しかもそれだけでは飽きたらず、休日には温泉まで遠出することも珍しくない。「○○温泉」という名称が付けられる場所は、観光ビジネスにとって特別なブランド価値を持つ。昨今の癒しブームや高齢者の増加によって温浴施設は各地で開業ラッシュが続いている。
その中で近頃とみに目立つのが「岩盤浴サロン」という新業態の温浴施設だ。そこそこ人気のあった街中のケーキ屋が、いつの間にか岩盤浴サロンに変わっていたり、繁華街でもない人通りの閑散としたところに岩盤浴サロンののぼりが翻っている光景をよく見かける。いまや足ツボマッサージ以上に、こんなところで?と思うほどあちこちに岩盤浴サロンが開業しているが、それで果たしてやっていけるのだろうか。そんな疑問の答えを探っていくと、そこには思いがけない仕掛人の存在が見えてくる。
そもそも岩盤浴ブームが巻き起こったのは、大量の汗をかくことで毒抜き効果があると言われ始めたことや、岩盤(天然石)の素材から発せられると言われる放射エネルギーが体に良い作用があるという口コミが広がったことによる。岩盤浴で汗をかくという点ではサウナと同じだが、その原理はまったく違う。サウナは蒸し風呂ということで、部屋の中の空気自体を高温にすることで体温を上昇させて急速に発汗させるもの。いわば風のなくて湿度が高い夏場にじっと座っていることと同じだ。しかし岩盤浴では、適度に温められた岩盤が遠赤外線を発していて、その作用で身体が温まることで汗がじわじわと出る。そのためサウナに比べると身体の負担が少なく、健康な汗をかけるのが岩盤浴の魅力だ。
本来の岩盤浴は火山の地熱がある温泉場で行うべきものだが、その環境を人工的に再現してビルの一室でも可能にしたのが岩盤浴サロンである。一般的な岩盤浴サロンは床全体が石になっていて、その下に温水暖房システムあるいは電熱ヒーターが組み込まれて床を加熱するという仕組み。最近ではベッド状のユニットにして一台からでも導入できるようにした岩盤浴システムも開発されているために、ビルの一室でも岩盤浴サロンが開業できるというわけだ。それでは、はたして岩盤浴サロンとは儲かる商売なのだろうか?そして裏側にいる仕掛け人の存在と業界構造について迫ってみることにしよう。
(健康関連ビジネス一覧へ)
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●病気を治すことから察知することへ変わる Health 2.0の兆し
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JNEWS LETTER 2007.3.19
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