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抗菌・清潔志向が推進する オーラルケア市場の動向と可能性
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化粧品、シャンプー、歯磨きといった、個人の身だしなみに関わるパーソナルケア製品の市場が広がっている。化粧品を例にすれば、今までは大人の女性専科だったコスメ関連商品は、男性や小学生までを対象としはじめた。これは、日本人特有の健康清潔志向の高まりが大きな要因になっているようだ。
「パーソナルケア」には、介護分野における自立支援の意味もあるが、ここでは健康清潔生活を維持していく上で必要な関連製品の市場が対象になる。そのパーソナルケア市場の中で、今後さらに新たな需要が見込まれる分野として「オーラルケア」に着目してみよう。
高齢化社会が喚起するオーラルケア市場
「オーラルケア」は、歯の疾病予防や口臭防止、入れ歯の手入れ等の口腔内の健康・清潔を目的としたケアを意味する。製品としては歯磨きや歯ブラシを中心に、口臭予防のうがい液や入れ歯洗浄剤がよく知られている。
歯ブラシ市場は、100円以下の低価格品の購入者層と、高機能付加価値品の購入者層に二極化している。高機能歯ブラシとしては電動歯ブラシが挙げられる。電動歯ブラシ市場の現在は、市場における金額的な割合としてはまだ1割程度ではあるが、家電メーカーの参入や価格の低下に加えて、その洗浄効果の高さが次第に浸透しつつあり、新たな歯ブラシ分野の需要として今後の拡大が期待されている。
また、最近、歯の疾病の原因として注目されるようになった歯周病の予防や、抗菌抗臭・清潔志向の高まりにより、口腔洗浄液(洗口液)やブレスケア製品といった新たな分野も登場してきている。
これら以外に、まだ大きな割合を占めるには至っていないが、デンタルフロスや歯間ブラシ、舌クリーナーなどの新しいオーラルケア用品が米国から浸透してきており、今後の拡大が最も期待される新市場である。
さらには、高齢化社会の進行がオーラルケアに新たな市場を提供する一因にもなることも注目しておきたい。いままでは高齢になることは義歯になることが必然とされてきたが、歯科治療の進歩や歯に対する考え方の変化から、できるだけ自分の歯を長く使う、自分の歯を残していくことを志向する傾向が高まってきている。そこから自然と、歯の日常ケアの必要性が認識され、オーラルケアに対する関心を高め、市場を活性化する可能性がある。
オーラルケアについては、米国が最も先進国である。歯並びと歯の白さで育ちがわかると考えられていることから、アメリカ社会での成功を目指す者は必ず、歯の審美眼的価値を高めて有利な立場を確保するために、矯正や美白等の歯に対するケアを怠らない。また、日常の生活習慣からも口腔ケアへの関心も高い。日本でのオーラルケア市場展開の方向性を、オーラルケア先進国での事例から探ってみよう。
オーラルケア先進国米国でのオンラインビジネス動向
日本国内ではオーラルケア製品の代表格は歯ブラシ・歯磨きになるが、何よりも歯の審美的価値を重要視する米国では、ホワイトニングや歯列矯正、そして、ブレスケアも大きな割合を占めている。こういった製品は、広く専門的な歯科衛生までを含んだポータルサイトでの総合的販売から、ジャンルを限定した単体だけの販売まで様々な形態でオンライン販売されている。
日本では「ホワイトニング(歯の美白)」ブームが下火になっていたが、このところ再び盛り返してきている。米国では、歯のホワイトニングはオーラルケアの重要なアイテムとなっている。審美歯科での歯の矯正と同様、歯科医がホワイトニングを行っているが、費用が300〜600ドルはかかるのが相場だ。そこで、家庭でできる安価なホワイトニングキットのオンライン販売がされている。
■American Dental Supply(ADS)
ADSは、「White Brilliance tooth whitening system(TM)」と呼ばれる、自分でホワイトニングができるキットを販売しているサイトだ。スターターキットを29.95ドル、完全キットをインターネット販売のみの特別価格59.95ドルでオンライン販売している。自分でホワイトニングする手間がかかるが、歯科医にかかる費用を遙かに下回ることから、需要は多い。
日本でも歯の美白志向が女性を中心に広く浸透してきていることから、積極的な情報提供+販売をオンライン上で展開することにより、習慣性の高い固定客を獲得できる可能性がある。
美白に次いで、「抗臭(口臭予防)」というテーマも今後普及しそうだ。既に口臭防止のためのブレスケア製品の販売が大手を中心に活発になってきている。この点でも先進的な米国では、ひどい口臭は社会生活においてハンディキャップになるとして、口臭予防の製品も様々なものが出ている。日本では経口の消臭剤や洗口液が一般的になってきているが、米国では「口臭は舌についた汚れで細菌が繁殖することにも原因がある」として、舌の汚れを取るセルフクリーナー器具がオンライン販売されている。
■Berath Cleaner
※クリーナー器具のオンライン販売と関連情報の提供がされている。
上記事例のような特定分野に絞り込んだオンライン販売は、ドラッグストアによる一般的なグッズ販売よりも、より深い客層を獲得できるメリットがある。化粧品のオンライン販売が(高い客単価×高いリピート率)によって成功している状況を踏まえれば、日本ではまだニッチではあるが「オーラルケア」という分野において専門性の高い情報を提供して、関心の高いユーザーを組織化しておくことは有意義だ。
米国には、オーラルケア専門のオンラインショップや、オーラルケアも含んで広く歯科衛生をカバーするポータルサイトもある。
■eDentalStuff.com
…歯磨き・歯ブラシから歯列矯正補助器具まで、オーラルケア製品に特化して総 合的に扱っている。
■UDENT
…歯科医師等の歯科衛生従事者や学生、および一般消費者向けに歯科衛生に関す る情報やトピックス、検索エンジン、製品販売等、総合的な情報サービスを提 供している。
いまの日本では、「癒し」と「健康」は、もはや捨てられることがない重要なキーワードとなっている。医療費負担増の現状や介護の実態等から、病気予防・健康維持への関心はますます高くなっている。とりわけ、清潔への志向が強い日本の気質から、パーソナルケア分野の必要性が今後も増していくことは間違いない。国内メーカーではサンスターや小林製薬などが、新しいオーラルケア製品の開拓を進めているが、米国の事例と比較すればまだまだ未開拓に等しい。今がオーラルケアの新市場を開拓する好機と見ることができる。
■JNEWS LETTER関連情報
JNEWS LETTER 2001.06.10
<シニア向け非医療ケアビジネスの未開拓市場と可能性>
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これは正式会員向けJNEWS LETTER 2002年5月1日日号に掲載された記事のサンプルです。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料(個人:月額500円、法人:月額1名300円)による情報提供をメインの活動としています。JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。
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