過疎地から容認される日本版ライドシェアリングの形
高齢者が、買い物や通院などの移動に使えるドア・ツー・ドアの移動手段を整備することも急務の課題になっているが、人口が減少している地域では、バス路線の廃止やタクシー営業所の撤退により、逆に交通インフラは悪くなっている。
そこで、ライドシェアサービスの普及が期待されているが、日本では全面的な解禁が難しく、ボランティアによる福祉目的限定、という着地点が設けられている。
あまり知られていないが、「公共交通空白地有償運送」という制度によって、日本でも過疎地に限定して、マイカーによる有償運送ができるライドシェアリングは認められている。
この制度を利用して、京都府の北部にある京丹後市丹後町では、「ささえ合い交通」というマイカー運送サービスを2016年5月から立ち上げている。ボランティアの地域住民(16人)がマイカー持ち込みでドライバーを担当して、地域住民や観光客の旅客運送を行っている。運賃は最初の1.5kmまで480円で、以遠は120円/kmを加算する方式で、タクシーのおよそ半額になるように設定されている。
利用者はスマホアプリからの配車依頼ができるようになっているが、この配車システムを提供しているのは「Uber Japan」で、日本ではまだ珍しい合法的なライドシェアサービスを後方から支えている。運行開始から1年間の実績は、毎月平均60回の利用があり、その8割は地域住民によるものだ。スーパー、病院、役所などが集まる近隣地区への移動で、午前中の利用が多い。
丹後町単独のサービス体系では、丹後町から京丹後市全域までの移動には、マイカー運送が利用できても、京丹後市内から丹後町へ変える際には利用できないことが、課題として挙げられている。NPOが行う小規模な有償送迎サービスは、隣接する地域で複数の団体が連携しあうことで、利便性は次第に高まっていく。
■ささえ合い交通(京丹後市丹後町 )
また、身体障害手帳の保有者や要介護認定を受けていて一人でタクシーに乗ることが難しい高齢者の送迎については、その条件が緩和された「福祉有償運送」という制度がNPO、医療法人、社会福祉法人などの非営利法人を対象に設けられている。
福祉有償運送は、白ナンバーの自家用車でも、特例として有料の送迎サービスを行えるもので、「福祉タクシー」とも呼ばれている。運転者は、国交省が認定する「福祉有償運送運転者講習(1日間)」を修了していれば、第一種の普通免許でも構わない。使用する自家用車は、車椅子を乗せやすいリフト機がある福祉車両であることが原則条件だが、介護の資格を保有していれば、通常のマイカー(セダン等)を使うことも認められている。
福祉有償運送の運賃設定は、国交省のガイドラインで「タクシー運賃の概ね1/2の範囲内」という基準があるが、それ以下の料金設定にすることは問題無い。たとえば、1kmあたりの運賃を100円に設定しているケース(距離制)や、病院までの送迎を1回につき240円(定額制)にしているケースなどがある。ただし、送迎の利用者を名簿として記録することが義務付けられている。
国交省では、公共交通機関を補完する役割として、福祉有償運送の規制緩和を進めてきており、“特区”に指定した地域については、有償送迎に利用できる自家用車の条件を緩めてきている。有償送迎の運転者として登録するのは、定年退職をした60代が多いが、有償ボランティアの実収入として月額10~15万円程度が得られる体制を築くことができれば、日本版の高齢者向けのライドシェアサービスを実現できる。
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