高齢者を主要顧客と捉えたシェアリングサービス
日本の65歳人口は、2014年に総人口の25%を超して、2025年には30%、2040年には36%になることが予測されている。その時には、現役世代 1.5人で1人の高齢者を支えなくてはいけないため、高齢者が、年金や介護保険などの公的制度だけに頼って生活していくことは、現実的に不可能になる。
PwC社が調査した共有経済のレポート「The SharingEconomy」によれば、米国では消費者の7%が、何らかのシェアリングサービスを利用しているが、その中で65歳以上の利用率が16%ある。これは、40代、50代の利用率よりも高い。これからの高齢者にとって、シェアリングサービスを上手に活用することが、快適な生活をする上で重要な手段になるだろう。
※出所:The Sharing Economy(PDF)
【高齢者専用シェアリングサービスの開発】
高齢者からニーズが高いシェアリングサービスには、家事代行、買い物送迎、ルームシェアのパートナー仲介などがあるが、若者ほどPCやスマートフォンを使いこなせるわけではなく、特別な配慮も必要になることから、高齢者専用のシェアリングサービスが新たな事業として成り立つ。このテーマは、行政からの支援も受けやすく、地域限定型のサービスにすることで、きめ細かな対応ができるため、スモールビジネスとしても適している。
1998年にペンシルバニア州在住の夫婦が創業した「Seniors Helping Seniors」は、部屋の清掃、食事の支度、病院への付き添いなど、高齢者向けの在宅ケアサービスを展開する業者だが、フランチャイズ制度により、地域単位の加盟店を設けることでサービスの拠点を広げている。現在は39の州、250以上の地域にフランチャイズ加盟店がある。
各地のフランチャイズ加盟店は、主に60代のシニアをケアスタッフとして雇い、高齢者宅(主に85歳以上)に派遣する。料金は1時間あたり25ドルが相場だが、加盟店の裁量で柔軟に決めることができる。60代というと、まだ働きたいが、仕事が無くて困っていることが多く、求人には苦労しない。自身も高齢の入り口に差し掛かっているため、高齢者の気持ちがわかり、在宅ケアの仕事には適している。看護師や介護の有資格者であれば、さらに良い。
【高齢者と若者の住宅シェアリングサービス】
「New York Foundation for Senior Citizen:NFSC(ニューヨーク高齢者財団)」でも、ホームシェアリング事業を非営利で行っている。このプログラムは、高齢者同士のマッチングではなく、60歳以上のシニアが“ホスト”となり、ホームシェアリングのパートナー(ゲストという)を募集することができる。そのため、70歳の高齢者と30歳の若者が、一つの家に住むという組み合わせもある。
高齢者にとっては、同居人ができることで孤独な生活から抜け出すことができるし、若者はニューヨーク市内で、家を1人で借りる経済的な負担は重いことから、双方にとってのメリットがある。
同財団では、ホームシェアリングのパートナーを仲介する方法として、犯罪歴などのバックグランド調査に加えて、31項目の生活習慣を入力すると、最も適合性の高いパートナーを見つけられる「QUICK-MATCH」というシステムを導入している。また、シェアをする住宅の家賃補助も行っている。
■New York Foundation for Senior Citizen
これから急増する単身高齢者の生活においても、最も厄介な敵は「孤独」である。お金を使うだけで、孤独は解消されるものではなく、心の通った人との繋がりを得られるシェアリングサービスへの需要が高まっていくことが予測されている。
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