スポーツ観戦の新たな楽しみ方を提供して、ファンとの新たな関係性を築くことは「スポーツエンゲージメント」と呼ばれる。たとえば、試合中の選手の動きをAI分析したデータをスマホアプリで確認しながら観戦できる仕組みが導入されている。
ファンとの新たな関係性を築くスポーツエンゲージメント

JNEWS会員配信日 2018/5/22

 スタジアムや競技場でスポーツ観戦するファンの大半はスマートフォンを持っており、必要な情報を引き出しながら、リアルな試合を楽しんでいる。また、米国の調査では、自宅のテレビでスポーツ観戦をする人でも、スマートフォンやタブレットも併用する視聴者が7割を超してきている。テレビに次ぐスポーツ観戦用のデバイス画面は、第二の媒体(セカンドスクリーン)として、新たなビジネスチャンスと捉えられている。

たとえば、NBA(全米プロバスケットボール協会)のInstagramには、約2,800万人のフォロアーが付いているため、媒体としての価値も大きくなっている。セカンドスクリーンを通して、ファンとの関係性を深めていくことは「ファンエンゲージメント」と呼ばれ、新たなファンや広告スポンサーの獲得に繋げていく手法が模索されている。

具体的な取り組みとして、NBAではスポーツデータ分析を専門とするSTATS社が開発した「SportVU」というシステムを採用して、試合中の選手の動きをビッグデータとして記録している。

このシステムは、バスケットコートに設置された6台のカメラから、選手とボールの位置を毎秒25回のサイクルでトラッキングするものだ。測定されたデータはSTATS社のAIアルゴリズムによって処理された後、NBA所属の各チームに提供される他、一般のファンにも公開されている。そのデータからは、各選手の移動距離や速度、パスの成功率、ボールへの接触回数、シュート回数、ディフェンス能力など、詳しいパフォーマンスを知ることができる。

NBA選手のトラッキングデータ(STATS)

STATS社のトラッキングシステムは、バスケットボールの他に、野球、サッカー、アメリカンフットボール、アイスホッケー、ラグビーなど、世界のプロリーグで導入されている。現代のコアなスポーツファンは、試合中継で語る解説者のコメントよりも、自分自身で好きなチームや選手の分析をするためのデータを求める傾向が強い。

そのため、球場やスタジアムでも、観客に詳しい情報を提供できる新型のスコアボードの設置や、スマートフォンへの配信システムを導入することが、ファンエンゲージメントの具体策となっている。

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