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AIが普及しても消滅しないフリーランス翻訳者の新職種

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JNEWS会員配信日 2022/10/25

 AIの進化により人間の仕事が奪われる危機感は各業界にあるが、逆にAIを味方に付けることで、仕事を増やしたり、収入を伸ばしていく事例も増えている。その典型例といえるのが翻訳業界である。近年では、Google翻訳などの機械翻訳が普及してきたため、企業の海外業務でも、簡単に自動翻訳が使えるようになった。

しかし、これまで翻訳会社やフリーランスの翻訳家に依頼してきた仕事を、機械翻訳に切り替えるケースはほとんど無く、逆に、翻訳業界の市場規模は成長している。これは、AIが行った翻訳文は100%の品質ではなく、会社の公式文書としては、そのまま使えないこと。その一方で、越境コマースや動画配信の字幕などで多言語に翻訳したいニーズは増えているためだ。

翻訳業界のリサーチを専門とするTranslated's Research Centerでは、世界各国の人口、ネット普及率、消費者の通販購入額から算定した、国別のeコマース購買力をT-Indexという指標でランニングしている。それによると、eコマースサイトを英語、スペイン語、中国語、日本語の4言語に翻訳すると、世界の購買力の60%以上にアクセスできるようになる。そのため、企業は翻訳に投資することで業績を高められる効果が高いことが実証されている。

《言語別のオンライン購買力シェア率》

Translated's Research Center T-Index

世界の翻訳市場は、2021年に561億ドルの規模があり、過去10年間で約2倍に成長している。世界には約64万人のプロ翻訳者がいるが、その中の約7割はフリーランスとしての活動とみられている。

最近では、翻訳会社の下請けになるよりも、ネットからの直接受注やクラウドソーシングサイトから案件を落札する方式へと変化しており、医療・法律・財務会計などのカテゴリーで専門性を高めていく翻訳者と、納品の速さで勝負する翻訳者との二極分化が進んでいる。後者の中からは、ポストエディターという職種が生まれている。

ポストエディット(Post-editing)は、機械翻訳が出力した結果を、人間が手直ししていくもので、翻訳者がゼロから訳文を作っていくよりも作業工数が少ないため、納期を早められるのが利点で、作業効率は従来翻訳の2~4倍と言われている。機械翻訳による訳文は、前後の文脈を把握しない直訳が多いため、プロの翻訳家は好まないが、新規で翻訳業に参入するフリーランスの中では、ポストエディターが増えている。

クライアントとなる企業側は、契約書類、プレスリリース、商品カタログなどの公式文書では人手翻訳を使うが、社内向けの会議資料やマニュアルの翻訳では、料金が安いポストエディットという使い分けをしている。ポストエディットの中でも、誤訳の修正のみを人手で行うライトエディットと、機械的な訳文を流暢な文章にリライトするフルエディットがあり、料金面では、すべて人手で行う日英翻訳の単価を1文字15円とした場合、ライトエディットは7円、フルエディットは10円という価格差がある。

《ポストエディット翻訳の流れ》

ポストエディターは、人手翻訳によるプロ翻訳者よりも翻訳単価は低いが、ネット経由でクライアントとの直接契約をすることで、実収入は人手翻訳者と同等か、作業効率を高めて更に収入を伸ばすことも可能になっている。

翻訳会社の下請けとして受注しているプロ翻訳者は、クライアントに請求する翻訳単価は1文字15円でも、翻訳者の受注単価は10円未満というケースが多い。一方、ポストエディターが、クライアントから10円の単価で仕事を直接受注できれば、プロ翻訳者よりも高収入を稼ぐという逆転が起きる。つまり、下請けの業界構造から抜け出して、クライアントに近い経路で仕事を獲得するノウハウを築くことも、フリーランス翻訳者のリスキルになる。

《受注経路で異なる翻訳者の収益構造》

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