EV充電スタンドの投資対効果と黒字化する収益構造
小売業やサービス業の店舗では、EV充電設備を設置することにより、どれだけのプラス効果が得られるのかという研究が、海外では行われている。充電設備によって期待できる効果は、直接的な充電の課金収入よりも、来店客数を増やして、店全体の売上を伸ばせる部分のほうが大きい。現在のEVユーザーは、平均な消費者よりも所得水準が高い層であることから、優良顧客を店に呼び込むツールとしても、充電設備は効果的に活用することができる。
EV普及の政策研究を専門に行う米Atlas Public Policyが2020年に発表したレポートによると、小売店舗がEV充電設備を設置することの具体的な効果は、顧客の店内滞留時間が長くなることだが、逆に長くなりすぎると、顧客一人あたりの売上は先細りになる特性があるため、充分な顧客回転率を確保することも重要であることを指摘している。
具体的には、平均客単価が50ドルの小売店で、店内滞留時間が25分→50分に伸びると、商品の売上は175%向上する効果がある。しかし、滞留時間が50分を超してからの売上上昇は9%に伸び悩んでしまう。この特性からすると、EVユーザーの集客マーケティングは、50~60分間の充電までを無料として、それ以降は有料課金することで、効率的な顧客回転を促すことができる。
しかし、平均客単価が25ドル未満の店では、もともと顧客を高回転させることで経営が成り立っているため、充電設備の設置が逆効果となり、来店客の回転率を下げてしまうリスクがある。その解決策は、販売単価の高い商品を充実させて、客単価を引き上げることだ。サービス業の店舗では、50分=1セッションとするような時間制の新サービスを考案すると、EV充電設備の投資効果が高くなる。
EV充電スタンドの補助金は、初期導入費の支援にはなるが、長期的にみた採算性を高める効果までは期待できない。そのため、スーパー、ホテル、小売店、レストランなどが充電スタンドを維持していくには、複数の収入源を確保していく必要がある。
充電料金の課金については最小限の収入にしからないことが、幾つものプロジェクト検証からも明らかになっており、ワシントン州議会では「EV充電サービスからの課金収入に依存したビジネスモデルは、経済的に成り立たない」と結論付けている。充電スタンドを長期間維持していくためには、充電料金以外の間接収入を作ることが不可欠というのが、欧米での見通しだ。
そのためには、充電スポットを提供することで、本業の売上も向上する仕組みを作ることと、広告収入を得ることが、収益の3本柱として注目されている。先のAtlas Public Policyレポートの中でも、広告収入の重要性が指摘されており、その割合は充電収入よりも遙かに大きい。
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