資産インフレの中で高騰するコレクション市場の特性
近年の資産インフレでは、株式市場に投資するのが最も手軽で利回りも良いが、常に暴落のリスクも併せ持っている。そのため、超富裕層の中でも株式や投資信託の保有率は総資産の3割程度に留めて、他にも資産を分散していくことが安全策になっている。代替投資先としては、不動産や貴金属(金やプラチナ等)が定番だが、これらの相場変動も金融市場とリンクする傾向がある。
そこで金融市場とは相関関係が低く、趣味と実益を兼ねたコレクション分野への投資が盛り上がっている。希少性の高いコレクションであれば、すべてのアイテムが投資対象になるわけではなく、信頼できる取引市場と相場が形成されていることが条件になっている。
一つのモノサシとして、株式市場の日経平均やダウ平均のように、市場指数(インデックス)が形成されているコレクションの分野は、投資熱が高まる傾向が高い。
クラシックカーでは、英国のHistoric Automobile Group International(HAGI)という民間の調査会社が、コレクション対象となっている車種毎にディーラー、専門店、オークション、個人売買で取引される価格動向を10万件以上リサーチした「HAGI Index」という指標を毎月更新して、クラシックカーの愛好者や投資家向けに有料で提供している。
また、スイスのジュネーブを拠点に運営される「The K500 Index」もクラシックカーを専門とした指標で、フェラーリ、ポルシェ、ベンツ、アストンマーチンなどの歴史的な名車、約500車種をそれぞれ1994年時点の価値=100として、以降の価値がどのように変化しているのかをスコアで毎月更新している。このスコアは世界のオークション会場で取引された売買データと車両の生産台数を元に、専門家の分析により算定されるもので、会員専用のデータベースには、車体番号別の売買歴も記録されて、いくらの価格で取引されてきたのかを時系列で把握することもできる。
その他にも、英国の富裕層向けコンサルティング会社のKnight Frank社(ナイトフランク)では、ワイン、時計、切手、コイン、ハンドバッグなど、投資対象に適したアイテムの分析をしたレポート「LuxuryInvestment Index」を毎年発表している。その中でも、最も上昇率が高いのは「レアウイスキー」のカテゴリーで、最近の10年間で取引相場が540%に高騰している。
■LuxuryInvestment Index(PDF)
資産インフレの中でも、すべてのコレクションアイテムが値上がりしているわけではなく、ヴィンテージ家具は10年間で価値が30%下落している。また、同じカテゴリーの高級品やブランド品でも、価値が上昇するのは一部のアイテムであり、資産目的で保有するのであれば、これらの指標を活用しながら購入対象を絞り込む必要がある。そのため多様なコレクション分野で、指標ビジネスへのニーズは高まっていくことが予測される。
コロナ禍でも、人気のコレクション相場は総じて安定していたが、クラシックカーにようにオークション会場の閉鎖によって現地確認ができなかったものは、一時的に取引相場が下がったケースもある。これを反省点として、今後のコレクション市場では、取引のオンライン化が急速に進むとみられている。言い換えると、オンライン取引がしやすいコレクションアイテムほど、価値の上昇が期待できる。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・一般層と富裕層で異なる資産構成の特徴
・代替投資として人気化するコレクション市場
・富裕層が収集する美術品の投資手法
・投資対象になるコレクションアイテムの特徴
・コレクション投資を加熱させる指標ビジネス
・コロナ危機に強いエルメスバッグ投資の優位性
・エルメスバーキン再販のビジネスモデル
・株式投資と比較したコレクション投資の欠点
・優遇税制を活用した株式クラウドファンディン投資
・米証券業界を席巻するロビンフッドのビジネスモデル
・高速売買が引き起こすコロナショック株価暴落の特性
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2020.12.1
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