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マンション管理を取り巻く業界構造と専門家の役割

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JNEWS会員配信日 2021/6/5

 日本で分譲マンションの住居スタイルが普及し始めたのは1970年代からのことだが、区分オーナーが集まり、建物を共同で管理していく方法は次第に変化して、現在のマンション管理市場は、2000年に制定された「マンション管理の適正化法」という法律の下で成り立っている。この法律では、マンション管理業者の登録制度や、国家資格であるマンション管理士の役割などが規定されている。

適正化法が制定された背景には、タワーマンションに象徴されるように、国内のマンションが大規模化していく中で、住民(区分オーナー)だけでは建物の管理をしていくことが難しいことがある。修繕積立金として積み立てられる資金も1億円を越してくるため、不正な資金流用が起きないように、会計管理のルールも法律で定められている。住民だけでは管理ができないし、管理会社に任せきりにすることもできないのが、近年のマンション業界である。

さらに2020年には、マンション管理適正化法の改正が行われた。その骨子となったのは、老朽化するマンションへの対策である。2019年の時点で、築40年を超す分譲マンションは総戸数に対して14%の91.8万戸となり、10年後には2.3倍(213万戸)、20年後には4.2倍(384万戸)になることが算定されている。耐震性に問題があるマンションを再生したり、建て替えられるように、住民同士の話し合いを円滑に進められるようにすることが、今後の課題として浮上してきている。

《築30年、40年、50年超の分譲マンション》

これまでの法律では、老朽化したマンションを建て替えるには、区分オーナーの4/5以上、マンションを壊して土地売却するにはオーナー全員の同意が必要になる。全員同意というのは現実的ではなく、建て替えについても、各オーナーの負担金が高ければ4/5以上の同意は難しいため、過去に分譲マンションが建て替えられた事例は少ない。

そこで改正法では、耐震性に問題がある築古マンションについては、従来の容積率を緩和する特例を設けて、建て替えをしやすくする方針だ。この特例が活用できると、狭い土地でも高層階のマンションに建て替えられるようになるため、以前からのオーナーが住む区分に加えて、新たな区分を追加で売り出せば、旧オーナーが負担する建て替え資金を減額することが可能になる。

国交省では、マンションの「新築→適正な管理→建て替え」の循環再生が行える仕組み作りを目指しており、それが実現すると、これまで買い手が付きにくかった築古マンションでも、建て替え後の価値上昇を狙った投資が活発になることも予測できる。

《国交省が描くマンション循環サイクル》

マンション管理適正化法の改正概要(国土交通省)

これからのマンション管理については、区分オーナーによる管理組合、業務委託先とする管理会社の他に、専門家の立場で管理組合をサポートする役割も必要になってくる。

2000年に創設された「マンション管理士」は、それに該当する国家資格で、管理組合役員からの相談対応、顧問業務、住民同士で起きるトラブルの仲裁、管理会社との契約内容について改善点の指摘。また、管理組合の理事に就任して、直接的にマンション管理の変革を行うこともある。国家試験の合格率は8~9%と低く、宅地建物取引士(宅建士)よりも難易度が高いと言われている。

マンション管理士には、弁護士や税理士のような独占業務は認められていないため、受験者数は毎年1.2万人前後、合格者は約1000人と、他の士業資格と比べて人気は低い。しかし、これからリノベーションや建て替えを計画するマンションでは、専門家の助言を受けることが必要不可欠になるため、マンション管理士が活躍できる機会は増えていくことが予測される。

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