寺院の檀家制度崩壊と永代供養サービスの採算構造
従来の檀家制度が崩れていく中でも、日本人の先祖崇拝の気持ちが薄れているわけではない。お盆の時期には、先祖の墓参りをしたい気持ちはあるし、遠くていけない場合にも、心の中では手を合わせている。それでも宗教への関心が薄れているのは、明瞭な加入・脱退の方法や、料金体系が示されていない、閉鎖的な慣習に違和感や猜疑心を抱いているためだろう。そのイメージを払拭して、寺院の収益性を高めるには、良い意味で“サービス業”としてのビジネスモデルを再構築していく必要がある。
わかりやすいのは、閉鎖的な檀家制度をオープンな会員制度に改めていくことである。具体的な方法として、会員制の永代供養サービスを提供する寺院では全国から契約者が集まっている。
「永代供養」とは、様々な理由で墓を管理できない人から、寺が遺骨を預かって永代(30~50年)にわたり管理と供養をするものである。料金面でも明朗な体系が示されているため、契約時に払い込んでしまえば、自分が亡くなった後、子孫に迷惑をかけることも少ない。
【永代供養サービスの採算構造】
永代供養の形態には、契約者毎に遺骨を納められる「個別納骨型」、複数の遺骨をまとめて供養する「合祀納骨型」、また納骨堂のタイプも、屋外に建立するものと、屋内に設置するもの、都会ではロッカー式などもあり、予算や希望する供養のスタイルよって選択することが可能になってきている。
霊園、墓地のポータルサイト「いいお墓」を運営する鎌倉新書が行った「お墓の消費者全国実態調査」によると、一般墓の平均購入価格は180~200万円であるのに対して、永代供養の契約料金は安ければ30万円、高くても100万円以内が相場になっている。
スペース(土地)に余裕がある地方の寺院では、永代供養で納骨ができる施設を新たに設置して、信仰する宗教・宗派問わずに契約者を獲得していくことが今後の生き残り策と捉えられている。永代供養の中でも、最近では、墓石の代わりに樹木の下に納骨をする「樹木葬」が人気となっており、このタイプであれば納骨堂を建てる必要がないため、 500万円程度の資金で永代供養サービスを立ち上げることが可能になっている。
永代供養のシステムは、契約時に33回忌または50回忌までの遺骨供養料を“前払い式”で徴収することが主な収益源になるため、一区画の契約スペースが定員に達すれば、次の区画を開発して、新たな契約者を増やしていく活動になる。高齢化により亡くなる人の数は増えていくため、永代供養に対する潜在需要は高い。
そこで重要なのが、契約者を獲得するためのノウハウだが、もともと僧侶は、営業やマーケティングは専門外であることから、寺院を専門としたコンサルティングビジネスが成り立っている。
非檀家からも遺骨の永代供養を受け付ける寺院は全国的に増えている。しかし、契約者の獲得に苦戦している寺院は少なくない。ネックとなっているのは、施設の存在を知ってもらうための広報活動である。広告宣伝費を使わずに、集客をするには、インターネットで情報発信や接客対応が不可欠になる。
寺院専門のコンサルティング会社では、WebやSNSの活用を軸とした情報発信により、新たな信仰者の獲得をサポートする。信仰のタイプにも色々あるため、そこから多様な収益源を築くことがコンサルティング会社の役割になる。
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