整備を起点とした自動車ディーラーの収益構造と参入点
自動車業界の動向というと、車両の販売台数を中心に報道されることが多いが、自動車整備部門でも年間5.5兆円もの市場規模がある。メーカー系ディーラーの収益構造をみても、仕入原価の高い新車販売・中古車販売と比べて、車両整備は技術料で稼ぐことができ、値引き交渉されることも少ないため、じつは販売よりも主力の収益源になっている。
具体例として、中部地方を拠点にホンダ・日産・BMWなどの正規ディーラーとして120店舗以上を展開するVTホールディングス(7593)でも、粗利益ベースで算定した収益構造では、点検・車検、修理などのサービス部門が45%の収入を占めている。正規ディーラーのビジネスモデルは、新車と中古車の販売により、定期的なメンテナンスを担当する車両数と顧客数を伸ばしていくことにある。
全国に約9万件ある自動車整備工場の中で、ディーラー系整備工場の割合は29%だが、売上高では48.7%を占めている。新車の購入時から顧客と長期的な付き合いができるのが、正規ディーラーの強みといえる部分だが、顧客側にも不満な点はある。それは、車の整備、修理費用は「部品代+作業工賃」によって算定されるが、ディーラー系の整備工場は両方とも価格設定が高く、車齢の長い車ほど、整備費用も高額になってしまうことだ。
【部品持ち込みによる整備ニーズ】
自動車の整備料金は、これまでディーラーが決めた“定価”が基本で、顧客側に値引き交渉ができる余地は無かったが、定期的に交換する部品については、消費者がネットで探して直接購入する選択肢が出てきていることから、ディーラー以外で、部品持ち込みによる作業依頼ができる整備工場へのニーズが高まっている。
自動車の整備・修理料金は、自動車メーカーや業界団体が指定する作業項目別の標準点数(時間工数)と、各整備工場が独自に設定する工賃単価によって算定される。工賃単価の設定は、大まかに言うと、正規ディーラーは「1時間あたり10,000円前後」が平均だが、一般の整備工場は「1時間あたり6,000~8,000円」が相場になっている。そのため、同じ作業内容でも2~4割の料金差が生じてくる。
また、正規ディーラーの修理は純正部品しか使わないのに対して、中小の整備工場は、顧客の予算に応じて、OEM品、リビルド品、中古品などを使った修理にも対応してくれるため、部品代と工賃を含めたトータルの修理費用では、2~3倍の価格差になることもある。しかし、ディーラー以外の整備工場は経営規模が小さく、評判も把握しにくいことから、新規のユーザーが利用するには敷居が高い面があった。そんな整備工場を有効活用しようとする動きが、eコマース業界の中から起きている。
(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2019.10.7
※アクセスには正式登録後のID、PASSWORDが必要です。
※JNEWS会員のPASSWORD確認はこちらへ
■この記事に関連したJNEWS会員向けバックナンバー
・コロナ対策としての満員電車の解消とマイカー市場の変化
・使用権と収益権を両立させるマイカー新オーナーシップ
・新車販売ビジネスの終焉と新サブスクリプションビジネス
・エンジンからEVへの動力革命で変化する消費者の価値観
・趣味と実益を兼ねた旧車レストアとネオクラシック市場
・旧車ブームを追い風にした国産ヒストリックカーの輸出事業
※バックナンバー用ID、PASSWORDを入力してご覧ください
(儲かる商売の裏側)/(トップページ)/(JNEWSについて)/(Facebookページ)
これは正式会員向けJNEWS LETTER(2019年10月)に掲載された記事の一部です。 JNEWSでは、電子メールを媒体としたニューズレター(JNEWS LETTER)での有料による情報提供をメインの活動としています。 JNEWSが発信する情報を深く知りたい人のために2週間の無料お試し登録を用意していますので下のフォームからお申し込みください。