日本国内には66万台のエレベータあり、保守市場だけで年間3,300~4,000億円の規模がある。エレベーターの保守契約は、建物が解体されるまで続くことが多く、新築時に契約を獲得できれば安定収益が永続的に入る特殊な商圏になっている。 (JNEWSについてトップページ
規制に守られたエレベーター保守点検市場の参入視点

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JNEWS会員配信日 2019/10/31

 安全管理の面から、ビルやマンションに設置されているエレベーターには法令点検の義務がある。建築基準法の中では、専門技術者による保守点検(1~3ヶ月に1回)と年1回の定期検査を行うことが定められている。

そのため、エレベーターが設置されている建物のオーナーは、エレベーター管理会社との間で保守契約を交わしているのが普通で、保守点検と交換部品代がセットになったフルメンテナンス契約(月1回の点検)は、エレベーター1台あたり年間で50~60万円が相場だ。

日本国内には約66万台のエレベーターがあることから、保守市場だけで年間3,300~4,000億円の規模がある。しかも、エレベーターの保守契約は、建物が解体されるまで続くことが多く、新築時に契約を獲得できれば、安定収益が永続的に入る、特殊な商圏になっている。


日本では、三菱、日立、東芝、日本オーチス、フジテックがエレベーターの5大メーカーとなっているが、保守点検についても子会社を通して、独占的な契約を獲得してきた歴史がある。これは自動車業界の純正ディーラーと似た構造で、エレベーターのメンテナンスには交換部品が必要になるが、メーカーは部品供給を子会社に優先的に行うことで、1993年頃までは保守点検においてもメーカー系列のシェアが95%以上を占めていた。

それではユーザー側が高いメンテナンス費用を負担することになるため、独占禁止法を根拠とした民事裁判が起こされて、メーカー系列以外の業者でも部品が入手しやすくなったのは、最近のことである。現在では、独立系のエレベーター保守業者が増えているが、それでもメーカー系シェアが80%、独立系が20%という業界構造になっている。今でも高いメンテナンス料を払っている建物は多いことから、全国各地に独立系メンテナンス業者として参入できる商圏がある。

《エレベーターメーカーのビジネスモデル》

2017年3月に株式上場した、ジャパンエレベーターサービスホールディングス(6544)は、1994年の創業から独立系エレベーター保守の市場を開拓してきた会社で、2019年9月時点では約52,400台のエレベーターを保守管理している。

同社の保守契約は、メーカー系保守会社と比べて3~5割ほど安い。同社は、安全性は犠牲にせずに、交換すべき部品数を厳選することでメンテナンス費用を抑えることに加えて、遠隔監視でエレベーターの故障診断が行えるシステムを開発して、技術者が現場で点検作業を行う回数や時間を短縮化できるノウハウを構築している。

エレベーターは、設置から20~25年で経年劣化によるリニューアルの時期を迎えるため、その頃がメーカー系から独立系保守会社への乗り換えをセールスする好機になる。エレベーター保守は、大きく注目される業界ではないが、今後もエレベーターの数が減ることはなく、法令点検の義務がある以上は、安定した市場が維持されていく。

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