特定立地で成り立つ特殊商圏の特徴と利権
ビジネスには、それぞれ集客や販売の対象エリアとなる「商圏」が存在している。昔の小売業は、半径数キロの地域毎に商圏が分かれていたため、個人商店の経営が成り立っていた。しかし、大手スーパーチェーンの進出や、eコマースの普及により、地域毎の商圏は崩されて、大半の個人商店は消滅していった。しかし、今でも経営を続けている店舗もある。
その特徴は、自宅兼用店舗の家族経営で、家賃や人件費の負担が無く、特別な商圏を持続していることである。たとえば、小中学校や大きな工場に隣接した立地にあり、特定の利用者層からは必要不可欠な店舗になっていることだ。こうした立地は、コンビニチェーンでも出店を狙いたいポイントだが、地主との交渉が纏まらずに、個人商店の商圏が守られた状態になっている。
このように、特定の条件下で成り立つ、ビジネス面で有利な立地は「特殊商圏」と呼ばれている。法律上の規制、地域や業界の慣習などにより、大手が参入しにくい真空エリア(無競争地帯)となっているのが特徴で、市場が飛躍的に成長することは無いが、安定した需要が見込めるためスモールビジネスには適している。
こうした商圏は小売業に限らず、多くの分野に潜んでいる。
【医療業界で成り立つ特殊商圏】
たとえば、医師が開業するクリニック(診療所)の立地も、特殊商圏の一つである。クリニックの商圏(診療圏)は、通院しやすいエリア(半径500m~2Km)の人口に対して、開業する診療科目の受療率を乗じることで算定されている。個人経営のクリニックでは、1日40名前後、月間で約1,000人の来院患者を獲得することが、経営を軌道に乗せる目安になっているため、同じ診療科目の競合が少ない、真空地帯の診療圏を見付けて用地や物件を確保したいというニーズがある。
そのため、不動産業界の中でも、医療クリニックの開業に適した物件を専門に調査、仲介する「医療不動産」のビジネスが成り立っている。調剤薬局の出店については更に露骨で、病院やクリニックに隣接した立地にある「門前薬局」は、安定した売上が確保できるため、物件の取得競争が過熱している。さらに、2016年からは、患者の利便性を高めるために、病院の敷地内に薬局を誘致する「門内薬局」を認める規制緩和も行われた。
ただし、それでは独占商圏としての利権が強くなってしまうため、2018年度診療報酬改定では、門前薬局を多店舗展開している大手業者や、病院の敷地にある門内薬局に対しては、1件あたりの調剤基本料が通常(41点)よりも、1/2(20点)から1/4(10点)に引き下げる制度が設けられている。
調剤薬局のように、商圏の利権が大きくなりすぎると、大手の参入や法規制によって利益の構造も崩れていく。そのためスモール事業者にとっては、表立ってはいないニッチな特殊商圏を見付けて、利権を守っていくことが、事業の規模は小さくても、安定した収益を維持することに繋がる。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・医療業界で成り立つ特殊商圏
・特定立地で成り立つ買い物代行業
・介護用品レンタルで形成される特殊商圏
・介護用品レンタルの集客ルートについて
・介護用電子デバイスの開発商機と参入カテゴリー
・規制強化されるフロンガス漏れ点検の専門市場
・エレベーター保守点検業界の特徴と利権
・整備を起点とした自動車ディーラーの収益構造と参入点
・売却価値が高い中小ビジネスとサラリーマンの事業買収
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2019.10.31
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