高額の移籍金で人気選手を引き抜く欧州サッカーでは、投資ファンドが移籍金を資金提供して選手の権利を獲得する構造になっている。選手の活躍により価値が上昇すれば、次のチーム移籍で投資益が得られる金融ビジネスが展開されている。
株式上場する欧州サッカーチームの実情と投資マネー

JNEWS会員配信日 2016/8/18

 スポーツビジネスに対しては、さらに本格的な金融ビジネスの仕組みを取り入れる動きも加速している。欧州の名門サッカークラブの中では、株式上場をするチームが増えており、イングランドの「マンチェスター・ユナイテッド」、イタリアの「Lazio(ラツィオ)」、「ユベントス」、「ASローマ」、ドイツの「ボルシア・ドルトムント」などが、証券取引所に株式を上場している。


Manchester United公式サイト

サッカーチームが上場をする目的は、一般のファンを“株主”として新たな資金調達がしやすくなることや、株価による時価総額の算定でチームの価値を高めることができる。そして、チームの実質的なオーナーにとって、これまで投下してきた資金を回収しやすくなる。

ニューヨーク証券取引所に上場しているマンチェスター・ユナイテッドの時価総額は、2016年8月の時点で26.91億ドル(約2,720億円)の価値があるが、議決権のある株式の9割以上は、米国の実業家であるグレイザー一族が保有している。

名門サッカークラブの収益は、チームのブランド力を活かした広告収入と放映権料、他企業とのタイアップ料、入場料収入などがあり、“金のなる木”であることは間違いないが、チームを強くするためのコストもかかる。実績ある選手をスカウトする移籍料は年々高騰しているため、超大富豪がオーナーとなっているケースを除けば、資金繰りはそれなりに厳しく、株式上場やファンドによって資金を調達する手法は、多くのチームが採用していくことになるだろう。

欧州サッカーの高額移籍金例

サッカー選手の移籍金が高騰している理由は、欧州圏内では選手の移動(移籍)が自由に行えることと、サッカークラブは選手との契約期間が終了する前に他チームへ放出することで、選手の保有権を収益化できることがある。実力やマーケティング面で商品価値の高い選手に対しては、高い移籍金で獲得したとしても、数年後に、他チームへそれよりも高い移籍金で放出できる可能性がある。

高額の移籍契約は、金融業界も一枚噛んでいる。投資ファンドが獲得チーム側の資金を提供することと引き替えに、選手保有権の一部を取得して、次にチームを動く時に値上がりした移籍金から権利分の割合を受け取るスキームが確立しているのだ。

欧州サッカーの移籍金投資スキーム

これは「サードパーティー・オーナーシップ」(第三者による選手保有)と呼ばれる仕組みだが、選手の意志にそぐわない移籍取引が行われる懸念があることから、国際サッカー連盟(FIFA)では、投資ファンドや銀行などの第三者が選手の保有権を取得することを禁止することを発表した。しかし、投資ファンドが移籍金を融資することについては認められていることから、欧州サッカーと金融ビジネスとの関わりは切れそうにない。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます記事一覧 / JNEWSについて

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