運送ビジネスの業界構造と車両持ち込み慣習
JNEWS会員配信日 2017/8/1
米国では、個人で大型トラックを所有して自営するドライバー(オーナー運転手)が 約35万人いて、運送業者の9%を占めている。彼らの平均収入は年間14万ドル前後(約1500万円)になるため、運送会社に雇われているドライバーにとっては、将来の目標とする存在でもある。しかし、米国で標準的な53フィートクラスの大型トレーラーになると、ローンの支払い、維持費、燃料代などで毎年10万ドル近くのコストがかかるため、年間で20万キロは走る中での空車率をできるだけ下げることが、高年収を稼ぐ上での急所になっている。
一方、日本では最低5台以上のトラックを保有しなければ、貨物運送業の許可を取得できない規則があるため、個人のドライバーが営業ナンバーを取得して自営することは難しい。しかし、運送会社も自前ですべての車両を揃えるのは経営的に厳しいのが現実で、トラック持ち込みによる人材採用が、水面下で行われている。
トラック持ち込みのケースでは、社員としての雇用ではなく、請負契約となり、車両の購入費やメンテナンス費用はドライバー側が負担して、実際に運んだ荷物の運賃総額から“ナンバー代”と呼ばれるマージン(10%前後)を差し引かれた分が、実収入になっている。これはナンバー貸し行為として、違法の扱いになる可能性が高いが、監督省庁では黙認の状態が続いている。
もともと、日本の運送業界は規制によって守られてきた歴史がある。1990年までは、タクシーと同様にトラック貨物の運賃も、運輸省(現国交省)による認可制となっており、運送業界全体で料金体系が統一されていた。この頃が、運送業界が最も儲かった時代である。
しかし、1990年代からは、段階的な規制緩和が行われて、最低車両台数基準の引き下げ(以前は地域によって 5~15台)や、運賃も認可制から事前届出制、そして事後届出制へと変更されたことで、運送会社と荷主との間で価格交渉ができるようになった。それに伴い、貨物自動車運送の事業者数は1988年に、3万8千社だったのが、2015年には6万2千社にまで増えて、運賃のダンピング競争が起きている。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。正式会員の登録をすることで詳細レポートにアクセスすることができます → 記事一覧 / JNEWSについて)
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