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リスクマネジメントの裏側に仕掛けられた
保険仲介ビジネス
written in 2007/2/20

 食品の賞味期限切れ問題やガス湯沸かし器の欠陥など様々な企業の不祥事が露呈している。これは他の企業にとって対岸の火事ではなく、いつ自分の会社に火の粉がかかってくるのか戦々恐々とした心境だろう。不二家などのケースは特異としても、企業がどんなに万全の策をとったとしても、責任を問われる落ち度というのは必ずどこかに潜んでいるもの。そこで最近では「リスク対策室」なる部署を新設する動きが盛んだ。想定されるリスクを事前に分析して不測の損害を最小限で抑えるための手法は“リスクマネジメント”と呼ばれ、近頃では専門のリスクコンサルタント会社も登場している。

ところがリスクマネジメントの定義にはどうも怪しさが漂う。昨今の世情から企業にはリスク対策にコストを支払う土壌ができているが、そこを狙っている黒幕は保険業界である。もともと企業が事業を営むうえでリスクの芽を事前にすべて摘み取ることは不可能である。そこで“リスク対策”と称して各種保険への加入をセールスしているような状況がある。たとえば、個人情報の流失対策としてなら「個人情報漏洩保険」という商品が開発されている。これは十年前なら姿形もなかった商品だが、ネットやパソコンの普及によって情報流出のリスクが高まったことにより新市場が温泉のように湧き出てきたような形だ。つまりリスク対策ビジネスというのは、新たな不安が社会的に指摘されることにより、いくらでも生み出すことができるものである。

ただし保険業界も巧妙で、各種のリスク対策保険を販売した後に、本当にそのリスクが頻繁に起こるようになれば、保険料支払いの負担は重くなり、保険商品としては赤字になってしまう。そこで「リスクコンサルタント」というスペシャリストを育成して、リスクの発生率を抑制するような工夫をしている。保険商品を売ることで稼ぎ、リスク対策のコンサルフィーで稼ぎ、となれば一つのリスクネタで二度稼げることになるが、このような仕掛けはいまに始まったことではない。生命保険会社が成人病を予防するための健康サービス会社と提携することはよくある話だが、他のリスク(不安)に対しても同じような業界構造が出来つつある。保険業界で独立起業するといえば、保険代理店を開業というのが従来の定番であったが、今後はリスクコンサルタントと肩書きを変えた人達が脚光を浴びることになりそうだが、その動向について迫ってみたい。
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この記事の核となる項目
 ●“不安”を商品として扱う専門家の台頭
 ●保険と連携したリスク対策ビジネスの流れ
 ●リスクへの不安を自由に操る保険ブローカーの存在
 ●保険代理店と保険ブローカーの収益構造の違い
 ●危機管理専門家へ向かう欧米の保険ブローカー
 ●新時代のリスクを「安心」に変える保険代理店の生き残り策
 ●IT時代の新しいリスクと対応する保険商品
 ●手数料収入からみた保険仲介ビジネスの採算性
 ●保険代理店は儲かる商売なのか?
 ●在宅健康管理サービスと赤字化する健康保険事業の深い関係


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