プロ棋士の高額年収を支える新聞社の役割と棋譜著作権
日本で古くから根強い人気のある伝統的なゲームとして「囲碁・将棋」がある。テレビゲーム全盛の時代になっても、囲碁や将棋の愛好者人口は安定していて国内の将棋愛好者は1000万人、囲碁愛好者は500万人と言われている。特に男性に人気の趣味としても、囲碁・将棋は常に人気ランキングの上位に位置している。
将棋の世界では、現在プロとして活躍している棋士が 200名ほどいて、その頂点を極めれば1億円を超すほどの年収を稼げる。プロ全体の平均では年収1000万円ほどだと言われている。野球やサッカーなどのスポーツ界ほどの派手さはないものの、趣味を極めることで成功への夢が持てる世界ともいえるだろう。
愛好者人口が多く、プロの世界が華やかであれば、そのすそ野には関連ビジネスの市場が広がるのが常だが、囲碁・将棋に関しては、スポーツ業界とは異なる商業的な構造を持っている。それを理解しておかないと、この分野で稼ぐことは難しい。
将棋の駒や盤はそれほど高くないため「道具の販売」だけではほどんんど商売は成り立たない。愛好者同士が対局を楽しめる将棋クラブや碁会所の経営を志す人もいるが、一名あたりの料金単価は安いために、これを本業とすることも厳しい。
囲碁や将棋は、誰もが手軽に楽しめる娯楽だけに、逆に、愛好者達からお金を落とさせる仕組みを作ることが難しいのだ。しかし囲碁・将棋の愛好者をしっかりと取り込んで、自らの収益へと結びつけている会社が身近なところにある。
【新聞業界と将棋や囲碁の関係】
将棋や囲碁をビジネスとして昇華させることに成功しているのは新聞業界である。高年俸を稼いでいるプロ棋士の収益構造の中で、最も大きなウエイトを占めているのが、タイトル戦の勝利で稼ぎ出した“賞金”だが、この賞金を提供する主催スポンサーとなっているのが新聞社なのだ。
将棋の世界では毎年7種類のタイトル選(7大タイトル)が開催され、各タイトルの獲得を目指してプロ棋士達は熾烈な戦いを繰り広げる。この7大タイトルの賞金スポンサーとなっているのは、すべて新聞社であることは興味深い。ちなみに、過去に7大タイトルすべてを独占した棋士というのは羽生善治だけである。
【新聞社が欲しがる棋譜情報】
新聞社がタイトル戦のスポンサーとして名乗りを上げるのは、棋譜情報の獲得に目的がある。新聞紙面、スポーツ欄の片隅には“将棋コーナー”が毎日掲載されているが、じつはこの内容を比較して購読する新聞を比較検討する読者というのがかなり多い。なにしろ将棋の愛好者人口は1千万人規模で、新聞をじっくりと読む高齢層になるほど将棋人口も増えてくることから、新聞社にとって“将棋コーナー”の充実は、他紙との読者獲得競争の上でも重要課題となっているのだ。
新聞社ではタイトル戦のスポンサーとなることで、各対局でどのように駒が動いたかを示す“棋譜”を誌面上に独占的に掲載できる権利を獲得する。そのため名人戦の詳しい動向を知りたい人ならば、必然的に毎日新聞を購読するようになる。
新聞社としては、スポンサー料を支払ったとしても、人気タイトル戦の棋譜を独占掲載できることで読者数が増えれば採算が合う。しかも最近では、インターネット上でも“棋譜”がオンラインコンテンツとしての価値を高めていることから、二次的な販売による収益も期待することもできるようになった。
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