アナログからデジタルに変わる資産承継と終活サポート
相続の法定書類として通用するのは、書面で作成さえる「遺言書」ではあるが、高齢社会が到来した今でも、遺言書の普及率はそれほど高くはない。Everplansの調査によると、米国では、調査対象者の66%が遺言書を作成していない。日本でも、法的に効力が高い「公正証書遺言」の作成件数は、年々増えてはいるものの、平成29年の時点で11万件となっている。これは、年間の死亡者(約130万人)に対して、1割に満たない普及率である。
日本の公正証書遺言は、遺言者(本人)に証人(2人以上)が立ち会いながら、公証人に口頭で伝えた遺言内容が筆記される方式で作成される。しかし、素人にとっては難しい作業となるため、文案の作成や、証人としての立ち会いを弁護士や司法書士に依頼するのが一般的だ。遺言書の作成費用は、相続資産額によっても異なるが、10~20万円はかかり、遺言内容を修正変更していくことも面倒なため、実際には利用しにくい制度になっている。
しかし、高齢者の中では、自分が保有する財産のことを、家族に向けた記録として残しておきたいというニーズは高いことから、公正証書遺言よりも法定効力は劣るが、自分自身で作成する自筆遺言書の電子版として、デジタル遺言のプラットフォームが普及していく可能性は高い。
2012年から米ニューヨークで運営されている「Everplans(エバープラン)」は、各種パスワードの管理に加えて、金融資産のリスト、生命保険、医療情報、葬儀計画など、個人の重要データを包括的に管理できるプラットフォームを開発している。
Everplansは、個人向けに年間75ドルで提供されているが、主なターゲットにしているのは、弁護士やファイナンシャルプランナーなど、相続専門家向けのビジネス用途である。
ビジネスアカウントの契約をすると、独自ブランド化した相続アドバイザーとして専用のサイト領域を持つことができ、クライアント毎のマイページを作成して、生前の相続対策としてやるべき項目を、ToDoリストとして共有しながら、個人の重要データを記録できるようになっている。セキュリティ対策にも万全を期しており、すべての保管データは暗号化されるため、クライアント本人と、相続した後の家族しかデータの内容を閲覧することはできない。
米国のハワイ、ミシガン州、ウィスコンシン州に住む富裕層を対象として、資産運用や保険のアドバイスしているファイナンシャルプランニングの会社「FIMグループ」では、顧客との関係性を深める目的で「Everplans」を導入して、既存事業とのシナジー効果を高めている。Everplansの中では、いわゆる“終活計画”をすべて管理できるため、相続対策としての不動産購入を勧めやすくなったり、クライアント本人だけではなく、相続人となる家族(配偶者、子供、孫)との信頼関係も築きやすい。
クライアントの中には、PCの操作に不慣れな高齢者も多いため、本人の承諾を得て、終活として記録を残しておきたい書類のスキャニングや、データの入力を代行することも、相続アドバイザーの役割になっている。
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