米MLBではメジャーリーグ選手が使ったボール、バット、ユニフォーム などが本物であることの認証システムとして、識別番号付きのホログラムシールを貼っている。このシールを貼られたグッズは本物としての信頼性が高く、二次市場でも高値で売買されている(JNEWSについてトップページ
米MLBが導入する公式グッズの本物認証システムと識別番号

JNEWS
JNEWS会員配信日 2014/10/7
記事加筆 2021/9/4

 プレミア価値が付くようなコレクターグッズは、ネットオークションでも頻繁に売買されているが、その中には“偽物”も多く含まれている。具体例として、メジャーリーグの人気選手がサインしたボールなどは、オークションで購入することのリスクが大きい。

1990年代に行われた、FBI(米連邦捜査局)の調査では、コレクター市場で流通しているサインボールの5割以上が偽物と推定されたことから、メジャーリーグ機構(MLB)に対して、偽物からファンを守るための対策が求められるようになった。

そこで、2000年代からMLBが導入しはじめたのが、ボール、ベースボールカード、選手のサイン入り写真など、すべての公式MLBグッズに“本物”であることの認証シールを貼り付けるシステムである。

メジャーリーグの選手が、試合で使用したボールやユニホーム、その他の記念品などにサインする時には、機構側が派遣した認証者がすべて立ち会い、本当にサインされたものであることを確認。その上で、個体識別番号の付いた特殊なホログラムシールを張り付け、機構側のデータベースに、サインされた日時と場所、認証者、グッズ名をバーコード入力する。


※MLB認証ホログラムシール付き公式ボール

また、2000本安打、100号本塁打、サヨナラホームランなどの記念ボールも、観客席に入ったものでなければ、全てを回収する。認証者が、誰がどの場面で打ったもので、どのような記録のボールかを確認した上で、個体識別番号の認証シールを貼る。

これらの、認証シール付きのグッズは、機構から球団の販売部へ渡されて、球場内やネットのショップで公式商品として販売されて、球団の収益源になっている。

この認証プログラムは、10年ほど前から、メジャーリーグすべての球団に導入されており、ボールやユニホームの他にも、選手が愛用していた帽子やゴーグル、折れたバット、球団クラブハウスの備品などにも識別番号が付けられて、現在までに 500万アイテム以上が、MLB公式グッズとして認証されている。

これらのグッズを、球団からの直販に限らず、ネットオークション、コレクターショップ、個人売買など、二次的なルートから購入したファンでも、MLBの公式サイト内にある「MLB authentication」のコーナーにアクセスして、シールの識別番号を入力することで、本物であることの確認をすることができる。

MLB authentication
■MLB認証プログラムの解説映像

なお、球場で観客席に打ち込まれたファウルボールやホームランボールは、観客のものとなり、ファンが選手に頼んでサインをもらうことも自由である。また、それを売買することが法律で禁じられているわけではない。

公式なサイン会では、選手がボールにサインした後、認証者が識別番号のシールを貼り付けるが、非公式な場所でのサインには認証シールが付かないため、ボールの資産価値としては、大きな差が生じてくる。ネット等でサインボールを購入するファンやコレクターは、個体識別番号が貼ってあるものを“本物”として選ぶようになるためだ。

この認証プログラムは、偽物の流通を防ぐ目的で導入されたものだが、結果として、MLB機構がグッズからの利益を独占的に確保することに結びついている。

【野球カードの資産価値を高める鑑定業者】

 MLB機構の認証プログラムは、2000年代以降からスタートしたものだが、いまプレミア価値が付いている野球グッズの多くは、それ以前に販売されているものである。それらを第三者機関として客観的に鑑定するビジネスも成り立っている。

Professional Sports Authenticator (PSA) 」は、スポーツ分野のトレーディングカードやサイン入りグッズを専門にする第三者鑑定機関として、1998年に設立された団体で、親会社は、コレクターグッズの各種鑑定を手広く行っている、Collectors Universe社(コレクター・ユニバース)という会社である。

PSAでは『段ボールの中で眠っているカードをゴールドに変える』というキャッチフレーズで鑑定ビジネスを行っている。米国では、野球のトレーディングカードがコレクターグッズとして収集されているが、同社はこれまでに2000万枚以上のカードを鑑定しており、その中では、ファンが数十ドルで購入したカードが、数千ドルの価値に化けた例も報告されている。

PSAが鑑定した野球カードの価値

PSAが野球カードを鑑定する方法は、まず偽造されていない本物のカードであることの確認がされた後、カードの保存状態(カードの摩耗、印刷の擦れ、光沢など)が細かくチェックされて 1-10の等級でグレードが決められる。サイン入りのカードについては、過去に活躍した選手のサイン筆跡が登録されているデータベースと照合して、本人のものであると認定されると証明書が発行される。

さらに、鑑定後のカードは、不正な偽装がされたり、傷が付いて品質を落とさないように、硬質プラスチックのホルダーに密封してしまうのが特徴だ。ホルダーには、識別番号が記録されたタグが挿入されて、不正開封防止のシールが貼られている。

このホログラムシールが剥がされずに、ホルダー内の野球カードが保存されている状態であれば、鑑定された等級のグレードは永続的に保証される仕組みだ。

密封ホルダーに埋め込まれた個別識別番号は、指紋や戸籍のような役割を持ち、コレクター間で個人売買された後も、新たな所有者は、前所有者の個人情報を除いたカードの詳細情報を PSAのサイトから照会することができる。そのため、野球カードのコレクター市場では、PSA鑑定を受けたカードの資産価値が高く評価されている。

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