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電子社会で活躍する権利エージェントの仕事と 命名権の価値 |
written in 2010/9/23
日本でも、「味の素スタジアム」「日産スタジアム」というように、ネーミングライツの事例が増えているが、もともとは米国が発祥で、メジャーリーグの人気チーム、セントルイス・カージナルスの本拠地「ブッシュスタジアム」(ミズーリ州セントルイス市)の命名がされた、1950年代が起源と言われている。
「ブッシュ」というのは、“バドワイザー”で有名なビールメーカー、アンハイザー・ブッシュ社の創業者(アドルファス・ブッシュ)を指している。スタジアムの所有者はセントルイス市だが、当時の球場を建設する費用の一部を、同社が支援することで命名権を得ている。
当初は「バドワイザー・スタジアム」という名称を考えていたが、それでは宣伝色が強いということで、創業者の名前を冠にすることで、50年以上が経過した現在でも、地域の人達や野球ファンに愛されている。公共施設の命名では、単に企業名や商品名を宣伝するだけではダメで、その地域の歴史や文化、社会貢献に対する姿勢などが反映されていないと成功しない。
日本では、命名権の契約期間が数年と短くて、施設名称がコロコロ変わってしまうことがあるが、これでは市民にとって迷惑なだけで、プラスの効果は期待できない。それに対して米国では、スポーツ施設の命名権が平均20年の長期契約で結ばれており、1年あたりの契約料は1億〜2億円が相場になっている。
たとえば、アメリカンフットボール(NFL)チーム、デトロイト・ライオンズのホームスタジアム「フォード・フィールド(Ford Field)」は、2002年に3億ドルをかけて建設されたが、その資金はデトロイト市とライオンズが折半する形になっている。そこへ地元の有力企業である、自動車メーカーのフォード社が、20年で4000万ドル(約36億円)の契約で命名権を獲得した。
これは自社を宣伝する目的というよりは、デトロイトの市民に対する社会貢献という意味合いのほうが強くて、命名権との引き替えによる“寄付”という捉え方もされている。企業がこうした形で社会貢献をする背景には、工場の環境問題や労働者の雇用などで、地域の住民と良好な関係を築いていきたいということもある。
■フォード・フィールド(デトロイト・ライオンズ)
http://www.detroitlions.com/ford-field/index.html
財政状況が厳しい地方公共団体にとって、施設の命名権を民間に与えることは有力な収入源として期待されているが、それは公共の施設にスポンサーを付けることを意味している。命名権取引の対象になる施設は、公園、駅、道路、空港、バス、電車、病院など多岐にわたり、その中でも注目されているのが「学校」である。たとえば、中学や高校が新しい校舎を建てる時に、理科室や音楽室の命名権を、その科目にちなんだ企業に提供することで、スポンサーになってもらおうとする発想だ。
企業は、教室の命名権を取得することで、直近の売上が伸びるわけではないが、その教室を利用した生徒が、大人になった時に、優良な顧客になってくれたり、従業員として働いてくれるなどの投資効果を期待することができる。
(知的財産ビジネス事例集一覧へ)
●公共施設の命名権を取引仲介するビジネス
●小学校が教室の命名権を販売する仕組み
●自然学者が発見した新種生物のライツセールス
●電子出版時代における権利セールスのスペシャリスト
●電子書籍の印税分配を交渉するエージェントの役割
●デジタル時代に見直されるヴィンテージ写真の価値
●パパラッチの撮影した写真が世界に配信される業界構造
●単品ではくポートフォリオ化される特許技術の価値
●IT業界の巨人が形成する特許ポートフォリオとは何か?
●特許ポートフォリオが生み出すライセンス収入の仕組み
●他社の技術を買収してライセンス料を稼ぐ知財投資ビジネス
●韓国ゲームの日本語化ビジネスにみるライセンス権の価値
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●著作権料で稼ぐカメラマンと肖像権を売るモデルビジネス
●頭で稼ぐ職業に存在する「収入と時間の壁」の乗り越え方
JNEWS LETTER 2010.9.23
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