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韓国ゲームの日本語化ビジネスにみる
ライセンス権の価値
written in 2010/2/25

 “メイド・イン・ジャパン”が世界のブランドとして通用するようななった頃から、家電製品のパネルやボタンから日本語の表示が見られなくなった。英語表記に統一することで、海外の市場でも製品を売りやすくするためだ。

モノ作りを得意としてきた日本では、長年にわたり「輸出高>輸入高」による貿易黒字の状態を続けてきたが、それも金融不況や新興国の台頭により、陰りをみせている。2008年度の貿易収支は28年ぶりに赤字に転落したが、これは自動車の販売不振によるところが大きい。日本の貿易黒字は、大半を自動車部門が稼いできたため、今後、日本車が世界でシェアを落とすことになれば事態は深刻だ。

ならば、ネットビジネスやコンテンツなどの新産業で勝負してはどうか?という考えもあるが、無形サービスの分野において、日本の貿易収支(サービス収支)は慢性的な赤字が続いている。たとえば、欧米の映画が日本でヒットすることはあっても、日本の映画が海外に輸出されてヒットすることは希である。また、「保険」も無形のサービスだが、外資系の保険会社が日本へ上陸しても、その反対に、日本の保険会社が海外で成功している事例は少ない。

《サービス貿易の収支状況(輸出−輸入)2009年》
    ・輸送サービス……-8,353億円
    ・旅行サービス……-14,192億円
    ・通信……-430億円
    ・保険……-4,001億円
    ・金融……+1,724億円
    ・情報……-2,721億円
    ・特許使用料……+4,523億円
    ・文化・興行……-832億円

    ※出所:財務省

国際的にみて、日本のサービス業が弱いのは“言葉の壁”があるためだ。日本語によって生み出された商品は、そのままの状態で海外に輸出することは難しく、日本国内でしか通用しない。例外的に、アニメやゲームソフトの分野では輸出に成功し海外でも大ヒットしているケースはあるが、それも“まぐれ当たり”の確率でしかない。それでも日本のサービス産業が成長してきたのは、日本人向けの内需だけでも相応の売上が見込めたためである。

ところが最近になって、日本人向けの日本語サービスについても、海外勢が市場を奪おうとする動きがある。いまミクシイで一番人気のソーシャルゲーム「サンシャイン牧場」は、中国のベンチャー企業が開発元となって提供しているものだが、ゲームの面白さからすると、それが“中国製”であることに気付かない人も多いだろう。

以前ならば、「日本人の嗜好に合うゲームは日本メーカーが作るもの」という既得権益が守られていたが、現在のオンラインゲーム市場では、メインプログラムは世界で通用する統一仕様で作っておき、それを各国向けにローカライズ(現地の言語化)していく流れになっている。そのため、一つの国で人気化したゲームは、非常に短いスパンで多言語化することが可能で、世界のユーザーを獲得することができる。

ゲームに限らず、いま注目されているビジネスモデルは、一つの大枠となるプラットフォームを普及させて、そこに相乗りする業者やエンドユーザーを増やすことで収益化を図ろうとするものだが、そのプラットフォームに相当するものは、日本市場だけで考えるのは、既にスケールが小さすぎて、世界規模で捉えていく必要がある。そこから各国向けのローカライズをすることで商圏を次々と広げていくのだ。その波に乗り遅れないことが、日本企業にとっての課題だが、世界では具体的に、どんな仕組みで多言語ビジネスが展開されているのかを見ていくことにしよう。
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この記事の核となる項目
 ●翻訳ビジネスから進化したローカライズ市場
 ●日本語ローカライズ作業の発注ルート
 ●ビデオ作品の多言語版を発売する流れ
 ●ゲーム業界のローカライズ契約モデル
 ●ローカライズビジネスによるサーとシーの力関係
 ●非営利の力によるローカライズの伝道力
 ●Mozilla Firefoxのローカライズモデル
 ●洋書のローカライズモデルと電子書籍への応用
 ●知財化する第四次産業で起こる専門人材の輸出入ビジネス
 ●国境を消滅させるサービス貿易とオフショア人材ビジネス


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