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雇われない働き方へと移行する 頭脳をウリにしたプロ人材 |
written in 2009/6/6
人は誰でも職業を持って生活をしていかなくてはならない。過去にどんな職業が登場して繁栄してきたかは、中学の社会科で学習した「第一次産業」「第二次産業」「第三次産業」という分類をさかのぼるのがわかりやすい。人類はまず、狩猟、農業、漁業といった仕事で食料を採取することからスタート(第一次)、次に文化的な生活に必要な物資を作る製造業(第二次)へと向かった。そしてモノを生産するための設備や環境が整うと、それを売るための小売業(第三次)が栄えていった。
しかしビジネスの進化は留まることを知らず、商品に高級なブランドイメージや高い付加価値を与えたり、逆に全国で最も安い価格を追求したりと、従来の分類だけでは仕事の内容が対応できなくなっている。そこで製造業や小売業だけではなく頭脳(知的所有権)を売り物にしたビジネス(第四次産業)、心・精神・感性などを扱うビジネス(第五次産業)という分類も登場してきている。日頃の職場でも知的な領域が深く求められるようになってきたことを実感している人は多いだろう。
そうなるとワークスタイルの変化や、新たな職種が登場してくることは必然の流れといえる。第○次産業という分類の定義には曖昧なところがあるが、欧米では知的労働者になるほど、多様な働き方の選択肢が登場してきており、在宅勤務制度で働く人達も増えてきている。特にその取り組みに積極的なのが知財業界で、米国の特許庁(USPTO)では「Trademark Work @ Home」というプロジェクトとして特許審査官に週3日は自宅で仕事をする在宅勤務制度をスタートさせている。
その目的は、ワーク・ライフ・バランスに配慮した“仕事と家庭”の両立ができる労働環境を作ることの他に、通勤による環境負荷を減らすこと、オフィスの省スペース化などあり、これからの時代を先取りした取り組みといえる。さらに知的財産を重視する世相になったことで、特許や商標の申請件数が増加して、それに対応できる審査官を拡充するためにも、在宅勤務で優秀な人材を広く採用したいという狙いがある。それに習って、韓国や日本の特許庁でも在宅勤務制度を導入しはじめている。
民間の企業でも在宅勤務制度を試験的に導入するケースは増えており、社員からの期待も大きいが、実行してみたところの現実的な問題点も浮上してきた。技術的な面から言えば、パソコンが使える仕事の大半は在宅勤務でも支障がないものの、不安なのは職場から離れていることによる疎外感だという。ただでさえ雇用が不安定で自分のポジションを守ることが難しい御時世に、ゆったりとした気持ちで在宅勤務をしていられるのは、相当な実力者か、出世を諦めた人に限られてしまうのだ。
このメンタルな問題こそが、在宅勤務の普及を阻む最大の要因になっている。そこで浮上してきたのが前回号で紹介した「インディペンデント・コントラクター(IC)」と呼ばれる、フリー(自営)の立場で仕事を受注する人達である。彼らがサラリーマンとしての在宅勤務者よりも強いのは、クライアントを一社に絞る必要はなく、複数のクライアントからダブルインカム、トリプルインカムの収入源を築くことができるため、「もしも今の会社に見捨てられたらどうしよう」という弱気になる必要がない点だ。逆にいえば、今後のサラリーマンにとって最大の懸念材料といえるのは、収入源が一つ(シングルインカム)のまま所属先の会社に依存しなくてはいけないという点だろう。
それではフリーの立場で複数のクライアントの仕事を担当できる職種にはどんなものがあって、どんなスキルを身につけていけばよいのか、それを今回は掘り下げていくことにしよう。
(知的財産ビジネス事例集一覧へ)
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●独立スペシャリストをサポートするヴァーチャル・アシスタント
●アシスタントが遠隔から担当する業務例
●準プロフェッショナルという立ち位置について
●法律業界における準プロ人材の役割とは
●プロのアシスタント業が成り立つ新たな職業と知的な専門業務
●対極化する労働力の質と専門性の追求
●不動産業者とアシスタントによるネット業務の流れ
●ダブルインカムを狙った家族法人による副業と家業の作り方
●ITで付加価値を高める高度人材の特徴とワークスタイル
●45歳定年説を裏付けるサラリーマン人件費が破綻するシナリオ
●機械にできない気遣いをウリにしたオンライン秘書の専門職
●JNEWSからの提案:在宅プロの発掘と育成、活用について
JNEWS LETTER 2009.6.6
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