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日米における知的格差を生み出している 新たな学歴社会の実態 |
written in 2006/6/9
サラリーマンが高収入を得る条件として“学歴”が影響していることは紛れもない事実だ。高卒と大卒とでは入社時の初任給から差が付けられていて、その後の出世コースも分かれてくる。人材を採用する会社側では「学歴がすべてではない」とは言うものの、学歴別の生涯年収を統計から比較すると、中卒者と大卒者(大企業の社員)とでは定年時には約1億円の差が生じている。
しかしいくつかの要因によって学歴社会の枠組みに変化が生じている。従来の学歴社会は15歳〜22歳という人生の極めて早い段階で勝ち負けが決まってしまう非情なものであったが、これからは長い人生の各コーナーで学歴をステップアップできるチャンスが用意されるようになる。その流れを生み出している要因の一つが“少子化”だ。大学機関では、これまで18歳〜22歳の若者を主な対象として教育をしてきたわけだが、少子化によってその学生層が減少していることから、新たな指導対象として社会人に目を向けはじめている。最近ではITによる遠隔指導(eラーニング)が実用化されていることから、社会人が仕事を休職して大学に通わなくとも、働きながら学位(学歴)を取得できる環境は整い始めている。
また、終身雇用の体系が崩れていることも学歴社会の変革には追い風だ。終身雇用が根付いていた時代には、社内で出身学校別の“学閥”が自然と出来上がっていたものが、人材の風通しが良くなったことで「どこの学校を卒業したか?」という学校名による格差は以前よりも小さくなっている。
しかし学歴社会が完全に消滅してしまうというわけではない。ビジネスの中で知財が重視される時代では、その人の知力を判断するための物差しとして“学歴”は最もわかりやすい。しかし従来のような「○○大学を卒業しました」という肩書きだけの学歴ではなく、「大学でどんな研究をしてきたか」という学歴の中身が深く問われるようになる。グーグルでは技術人材の採用時に「博士号の取得者」という高学歴によるフィルターをかけているが、これはグーグルで研究開発をするには、その水準の知力が必要になるという意味での設定である。
「しかしオレは高卒だから」と悲観してしまう必要は何もない。これからの時代の“学歴”とは、社会人としてビジネスに関わりながら、その職務に関連した知識を習得することで次第に高めていくことが前提だ。学歴による人生の勝敗は二十代前半までに決まってしまうのではなく、学歴を高めていくための機会は何歳になっても平等に与えられている。そんな“新しい学歴社会”における勝者の法則と商機について探ってみたい。
(知的財産ビジネス事例集一覧へ)
●学歴の積み重ねで築く米国の専門職について
●新しい時代における学歴格差の実態
●働きながら学位を取得する社会人研究者への期待
●博士号を取得するまでのプロセス
●サラリーマンの実戦経験を活かして大学教授へと転身する道
●知財社会を担うサラリーマン技術者が独立起業を果たす道
●知的財産立国に向けて浮上する特許技術の移転仲介ビジネス
●“技術”を商品として独立していくITエンジニア達の稼ぎ方
JNEWS LETTER 2006.6.9
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