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起業家になるためのノウハウ集


株主代表訴訟から考える共同出資型ベンチャー企業の落とし穴


 起業家が複数の資本家から資金を集めて企業を設立する場合や、気の合う仲間同士が共同出資という形で企業を設立するケースは珍しくない。これらの方法ならば自分の手持ち資金が少額であったとしても起業の夢が実現できるためだが、そのリスクも十分に認識しておく必要がある。

 今回は幾つかあるリスクの中でも「株主代表訴訟」について考えてみたい。

※株主代表訴訟とは
 経営者や役員の判断ミスや努力不足により会社が損失を受けた場合には、株主が取締役の経営責任を会社に変わって追求し損害賠償を求める訴訟のこと。これに株主が勝訴すれば取締役は会社に与えた損害を個人で賠償しなければならず、その賠償額は本人が死亡しても相続される。

 一般的に「株主代表訴訟は、大企業で行われるもので中小企業ではあまり、お目にかからないものである」と思われているが、実際は決してそのようなことはなく、中小企業でも代表訴訟は行われ、株主が勝訴している例も見受けられる。これからは、中小企業の経営者にとって代表訴訟を起こされるリスクについて十分検討する必要が生じてきたといわざるを得ない。

 例えば会社設立にあたり多額の資本金をエンジェルや友人に出資してもらい、それから何年間も、経営者の努力不足により赤字経営が続き、利益が生み出せない場合には、出資者である株主がその経営責任を株主代表訴訟で会社に変わって追及して経営者側に賠償請求することなどが具体的に考えられる。

 そこでまず、なぜ代表訴訟を起こされてしまうのかについて考えてほしい。訴訟を起こす目的は、幾通りか考えられる。いくつかのパタ−ンをあげてみよう。

(1) 内紛型
 役員の社内派閥の抗争経営陣の対立など企業内の対立がある場合、一方が相手方を窮地に追い込むために、また自らの正当性を公にするために訴訟を利用するもの。

(2) 旧役員、旧従業員型
 なんらかの理由で会社を離れなければならなくなってしまった役員、従業員が、現在残っている役員に対して経営の責任を訴訟の場で明らかにし、立場の逆転を試みようとするもの。

(3) 大株主型
 個人の大株主が原告となるパタ−ンである。
 個人株主はこれまで主として株価の値上がり(=会社の業績の向上)を期待して株式を保有しているわけだが、株価が低迷すれば経営に対して異議を唱えることの意志表示の場として訴訟を利用するもの。などがあげられる。

 では、なぜ最近になって代表訴訟がこれほどクロ−ズアップされてきたのだろうか。クロ−ズアップされることとなった直接の原因は、商法の改正であるその内容を挙げてみよう。

<訴訟費用の定額化>
 手数料を一律8,200円と定額化した。このため、株主が自分で訴訟を起こそうと思えば、役員に対する何百億円の損害賠償請求も、8,200円の収入印紙と役員一人あた6,000円程度郵便切手の負担のみで行うことができるようになった。

改正前の取り扱いでは、例えば株主が役員に10億円の代表訴訟を起こすには、300万円程度の印紙代が必要であった。

<勝訴株主の権利の拡充>
 原告株主が勝訴した場合、株主が会社に請求できる費用が、これまでの弁護士報酬相当額に加えて訴訟にかかるそれ以外の費用の額についても請求できるようになった。といった点が挙げられる。

しかし、現実は、商法改正というアナウンス効果だけではなく、バブル期に行った取引の責任を追及されるということに代表されるように、会社の業績が低迷している場合には、その責任を追求される時代となってきたということである。

では、会社役員はどのようにしてこの訴訟の危険から防衛すればよいのだろうか。

【対策1.不必要に第三者に株式を持たせないこと】
 株主が代表訴訟を提起して勝訴したところで、役員から金銭的な賠償を受けるのは会社であって原告株主ではない。

 例えば、発行済株式総数の1%を保有している株主が役員に1億円の損害賠償を起こして勝訴したとしても原告の得る利益はわずか100万円にすぎない。このために膨大な時間とエネルギ−を必要とする。更に、敗訴した場合には訴訟関係の費用はすべて原告の負担となる。持ち株割合が低い株主が、このようなリスクを負ってまであえて訴訟を起こす例が頻繁には起こりにくいと予想される。

【対策2.不必要に本業以外でリスクのある経営をしないこと】
 代表訴訟を提起するためには、役員の違法行為と会社の損害を「法的な事実」として主張しなければならない。

 中小企業の代表訴訟の判例で役員が負けている場合の多くは、バブル時期の有価証券取引や土地取引といった本業とは関係のないリスクのある取引を責任を問われている場合で、本業が不振のため、本業に関係のある取引の場合は、決して役員の責任が問われることはない。(敗訴した例は少ない。)

【対策3.公私混同した経営を行わない】
 言語道断なことだが、会社の金を一部役員で私的な経費に流用し会社の資金が足りなくなってしまったという理由で役員が敗訴するという判例がいくつかでている。

 以前にストックオプション制度の説明でも述べてように同族会社では従業員に株式を持たせることは、従業員が会社を去ったときに金銭的なトラブルの元ととなるばかりではなく、代表訴訟を起こされるリスクも抱えることになる。従業員に株式を持たせて双方に利益があるのは、上場して株価が上昇するときのみで上場するつもりがないのであれば、決してメリットがあるとは、言い難いものである。

                            税理士 天野直之


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