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起業家になるためのノウハウ集


景気変動の波に負けないベンチャー企業の作り方


 企業経営は難しいものだ。雑誌紙面で「成功ベンチャー」と持ち上げられた企業が数年後には次々と倒れてしまう。インターネット業界においても最高の成功企業と賞賛を浴びていたネットスケープ社であってもひとたび赤字決算に転落すれば身売り説が飛び交うなど「一寸先は闇」を突き進んでいくのが企業経営である。

 特に急成長しているベンチャー企業が数年後の危機に陥りやすいのには原因がある。

 その主たるものが「固定費の急激な増加」だ。企業の収支とは「入ってきた金」と「出ていく金」との差し引きで決定する。「入ってきた金」が多かったとしても「出ていく金(毎月かかる経費=固定費)」も多ければ利益は残らず経営は悪化していく。この小学生でも理解できる原則がビジネス競争の波の中で揉まれていると麻痺してしまうことがよくある。

【年商主義の誤算】
 「我が社は年商10億に到達した」というように会社の規模や成功度は1年度の総売上高である「年商」の大きさで判断されるのが一般的だ。特にビジネス系の雑誌で成功企業として持ち上げるためには「年間利益800万円のベンチャー企業」とするよりも「年商1億円の成功ベンチャー企業」としたほうが読者にインパクトを与えられるためなのだろう。

 しかし経営者の視点からすれば「売上高の大きさ=年商」はリスクでしかない。「年商が大きく利益が少ない会社」よりも「年商が小さくても利益が大きな会社」をつくる方が長い目で見れば成功である事を覚えておくべきだ。そこで「年商の大きさ」が与えるリスクについて考えてみよう。

<人件費について>
「年商が大きくなる」ということは取引量が増えることを意味している。

単価1万円の商品で年商5000万円を稼ぐためには
 ・5000万円÷1万円=5000件の取引
単価1万円の商品で年商10億円を稼ぐためには
 ・10億円÷1万円=10万件の取引

に対応できるだけの人員を確保する必要がある。そのために成長段階のベンチャー企業のように数年で急激に売上げが上昇する場合には、短期間で大量の人材を確保しなければすべての注文を裁くことはできない。しかし短期間で大量の人材を確保することで求人においては「売り手市場」が成立して一人あたりの給与水準も上昇するが、その割に有能な人材が集まりにくいのが現状。従業員は急激に増やすのではなく、徐々に段階(時間)を経て増やすのが正攻法だといえる。

<設備投資について>
 取引量の増加は人件費と同様に設備投資にも大きな資金を要するようになる。製造メーカーならば生産ラインの増設をおこなう必要があるし、他の業種であっても従業員の増加ペースのあったオフィススペースの確保をおこなわなければならなかったり、その他、パソコン機器の新規購入も必要となる。

<受注の限界値を考えておく>
 小規模ベンチャー企業が大躍進する例を考察してみると大企業との大口契約が成立したことに起因しているケースが多い。例えばノートパソコンの新型バッテリーを開発しているベンチャー企業の製品が大手パソコンメーカーに採用されたとする。大手メーカーでは月産1万台の生産台数を予定しいるために契約ベンチャー企業に月1万個のバッテリーの納入を求めてくることになる。しかし現在の月間生産可能個数が3000個だった場合には大幅な生産ラインの増設をしなければならないが、これは小規模ベンチャー企業には大きなリスクとなる。

<将来の展望を見定めること>
 「小規模ベンチャー企業 対 大企業の契約」については上記の様にロットが大きくなることでリスクを伴う。この契約が永年にわたり継続されなければ長期の融資を受けておこなった設備投資や従業員の増員が仇となって、企業の資金繰りは急速に悪化することになるためだ。実際に過去の倒産事例を調べてみれば「小規模ベンチャー企業 対 大企業の契約解消」が起因しているケースが多いことに気付くはずだ。

 また大企業との契約でないにしても、今期の業績だけを判断材料として大幅な企業規模の拡張をおこなうことには慎重を期すべきだ。特にインターネットビジネスの様に変化が激しい業界では売上げを伸ばすことよりも利益率を上げる努力をすることが生き残り戦略となるはず。いったん増加した必要経費は売上げが減少しても減ることはないのだから。

【株式公開の悪夢】
 株式市場に上場することが成功のシンボルと見る向きもあるが、株式公開しなければ経営が上手くいったのに、公開したばかりにおかしくなったケースも珍しくない。これは常に「株価」の呪縛から離れられないためだ。

 株式市場から資金調達する場合でも金融機関から資金調達する場合でも、株式公開企業はある意味において常に株価が担保となっている。株価が下がれば先行きの不透明さが噂され投資家や融資先が不満の声を上げ、それが資金繰りへの悪化へとつながることになる。

 株価を下げないためには「毎年増収増益」を続けなければならなく、そのためには新たな資金調達で設備投資や従業員拡充をしていく必要がある。しかしこの戦略で永年にわたり好成果を出し続けることは不可能。

 もちろん株式公開によるメリットも大きいが、単なる金儲けとは違ったスタンスで「夢」を仕事にしている経営者にとっては非公開企業として独自資本を貫くことの意味は大きい。

【リスクを軽減させる経営方法とは】
 企業経営においては、ある規模の売上げ水準にまで到達した段階で必要となる費用を圧縮することで利益率を好転させることが必要。(売上額追求主義では時間の経過と共に利益率は低下していく傾向にある)

 そのための方策としては費用を「固定費」から「変動費」に振り分けることが最も効果的だ。固定費とは売上げの増減に関わりなく毎月必要となる費用で、変動費とは売上げの増減によって変動する費用のことである。

<固定費>
 一度増加してしまえばその後の売上高や生産量の変動に関係なく必要となる費用のことを指し、会社設立からの時間が経過していく毎に増加していく傾向がある。人件費を中心として固定資産税や接待交際費、交通費などがある。

<変動費>
 売上高や生産量が増えれば増加するが、逆に低下すれば同じように低下する費用のことを指す。原材料費、外注費、出来高給、時間給、歩合給、販売手数料、リベートなどがある。

 上記の説明から通常の正社員の給料は低下することのない固定費にあたるが、セールスマンの歩合給や出来高給は変動費になる。また今まで従業員に任せていた仕事を外注に出すことでも「固定費→変動費」への移行が可能になる。

 年収1千万円の社員のケースで考えると基本給とボーナスだけで1千万円を支払うよりも基本給とボーナスとして600万円、残りの400万円は出来高給として支払う方が会社にとってのメリットは大きい。

<ケース1・固定費のみによる給与体系の収支変動>
[平成8年度]
◎年間売上額3億円(粗利益1億円)
人件費3名×700万円=2100万円 <------(固定費として)
     その他の費用=3000万円
=====================================
    最終収支=4900万円の黒字

[平成9年度]
◎年間売上額1億5000万円(粗利益4500万円)
人件費3名×700万円=2100万円 <------(固定費として)
     その他の費用=3000万円
=====================================
     最終収支=600万円の赤字

<ケース2・変動費を導入した給与体系の収支変動>
[平成8年度]
◎年間売上額3億円(粗利益1億円)
人件費3名×900万円=2700万円 <------(出来高給として)
     その他の費用=3000万円
=====================================
    最終収支=4300万円の黒字

[平成9年度]
◎年間売上額1億5000万円(粗利益4500万円)
人件費3名×500万円=1500万円 <------(出来高給として)
     その他の費用=3000万円
=====================================
           最終収支=0円

 ケース1の場合には固定費による給与体系のために景気の変動で売上げ額(粗利益)が落ち込んでも人件費を削ることができず最終決算が赤字に転落してしまうが、ケース2では売上額(粗利益)に連動した出来高給の給与体系であるために平成8年度の好況時には給料が通常より高くなるが、翌年度に売上額が半分に落ち込めば給料もそれに連動してカットされる(900万円→500万円)。

 会社としてはケース1、2ともに一人あたりに支払う2年間トータルの給与額は1400万円と同じだが不況時に最終収支がプラスマイナスゼロなのか600万円の赤字になるのかの差はかなり大きく、この違いが金融機関の融資査定にも大きく影響を及ぼすのだ。(平成10年度以降の資金繰りに影響する)

【SOHO活用メリットの創出】
 企業の固定費用を下げる方法として給与体系の変更よりも更に効果的なのは「業務のアウトソーシング化」である。給与としてではなく「外注費」として外部企業に業務を委託することである。その場合の受注の見積金額は各社ことなるが、原価計算にかなりの利益分を上乗せしてくるので割高になることが多い。しかし有能なSOHOを活用することができればその問題も解決する。

 発注する内容の業務を自社内でおこなっていた社員よりも有能なSOHOに在宅にて業務を委託できれば、変動費によるリスク削減の他にも、オフィススペース確保の必要もなく、社員には付きものの福利厚生費や保険料の負担も無関係だ。

 とかく現在のSOHO熱は求職側(SOHO側)だけが高いように思われがちだが、企業としても固定費を削減して利益率を高めるための戦略としての有効手段であることを忘れては成らない。これからの成長企業は決して従業員人数や年商の規模だけで評価されるものではない。「最終的な利益率が何%なのか」という最もシンプルな指標で高スコアを提示できる経営者こそが有能な経営者であることを覚えておきたい。


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