未上場の中小企業が資金調達をする方法として株式クラウドファンディングが注目されている。FUNDINNO(ファンディーノ)は日本発の株主クラウドファンディング・プラットフォームとして国内のベンチャー事業案件を扱っている。 (JNEWSについてトップページ
株式クラウドファンディングを活用した資金調達の方法

JNEWS
JNEWS会員配信日 2020/10/5

 従来、中小企業が銀行から融資を受ける際には、経営者が連帯保証人になることが求められるため、事業の失敗が自己破産にまで繋がるケースが多い。ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合でも、期限までにIPOかバイアウトによるイグジット(出口)が見込めない場合は、経営者が株式を買い戻す旨の条項が、出資時の契約書に加えられるのが通例である。

そこで、株式クラウドファンディング(ECF)による資金調達の方法が注目されている。株式クラウドファンディング(ECF)は、小口の出資で多数の投資家がベンチャー事業のリスクを分散して背負うことになるため、経営者は失敗を恐れずに革新的な事業にチャレンジすることができる。ただし、実現性が低い事業計画で投資家から資金を集めることは詐欺同然の行為となるため、ECFを定着させるには、厳しい審査をした上で、信頼できる事業案件のみを扱うECFプラットフォームを築く必要がある。

日本では、今のところ「FUNDINNO(ファンディーノ)」が国内ECFプラットフォームで8割のシェアを占める投資実績があり、その中から2件のイグジット成功例を出している。

1件目は、遺伝子検査キットと漢方製剤のサプリメントをネット販売する「漢方生薬研究所」で、2018年1月に1株500円(最小投資額は1万円)で出資を募り、目標額が1,200万円の設定に対して、457人の投資家から、2,925万円の資金を調達することに成功した。

その後の2019年6月には、投資会社が同社の株式を1株750円の条件で、13,300株を上限に買い取ることが決定したため、この時に株式を譲渡した投資家は、1年半で1.5倍のリターンを得ることができた。

漢方生薬研究所の資金募集時のページ(FUNDINNO)

2件目は、広告収入型で乗車料金無料の配車サービスを開発する「nommoc」で、2018年6月に254人の投資家から1株50円で5,000万円を調達した。その後、2020年4月に複数の法人が80人から1株75円で買い取る取引をしたため、売却に応じた投資家は1年9カ月で1.5倍のリターンを得ている。

nommocの資金募集時のページ(FUNDINNO)

上記の2つは、日本のECFにイグジットに成功した唯一の事例であり、FUNDINNOが過去に成立させた投資案件(87件)の中でのイグジット率は、約2年で2.3%の確率になる。一方で、資金調達後に破綻した会社も2件あることから、ECFは短期の成果を期待するものではなく、長期的な視点に立つエンジェル投資家として新興企業を支える覚悟が必要になる。

 世界で最も株式クラウドファンディングの環境が普及しているのは、英国と言われている。英国政府は、個人投資家の保護を念頭に置きながらも、ベンチャーキャピタル以外にも未上場企業への投資機会を与えることに積極的で、ECF投資を促進する規制緩和を10年程前から段階的に行っている。

2014年以降は、審査基準をクリアーしている未上場企業は、ECFを通して調達資金の上限なく、個人投資家からの出資を募ることが可能になっている。しかし、未上場企業への投資リスクは高いことから、資金調達する会社は、リターンの機会を度々与えられる経営を行うことが、投資家との信頼関係を築く上で重要なノウハウになっている。

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