ベンチャー企業の資金調達には、株主出資と銀行融資の2種類が主にあるが、クラウドからの資金調達も実用段階に入っている。それに伴い、クラウドファンディング専門のスペシャリストが新たな職業として成り立つようになっている。
ベンチャー企業の資金調達とクラウドファンディング専門職

JNEWS会員配信日 2016/9/21

 事業に必要な資金を調達する方法は、銀行から融資を受けるか、株式を発行して出資を受けるかの2種類があるが、それぞれに一長一短がある。

銀行融資は、すべての中小企業に門戸が開かれているが、信用や担保力が無いスタートアップ企業への融資審査は厳しくて、借りられても数百万円というケースが多い。これだけでは、新製品を開発して事業を拡大していく資金としては乏しい。

そこで、IT系のベンチャーは、投資家からの出資を受けながら事業を成長させていくことが多い。ベンチャー企業の成長ステージは、シード→アーリー → ミドル → レイター → 上場 という段階で表現されるが、近年では、IoT、Fintech、人工知能などテーマにした、創業間もないベンチャー企業へ出資するプロの投資家やベンチャーキャピタルが増えている。

《ベンチャー企業の成長ステージ》

○シードステージ
…起業の準備段階から創業初期のステージ(創業者と仲間数名)
○アーリーステージ
…創業2~3年、収益モデルも安定していないことが多い。
○ミドルステージ
…事業が軌道に乗り始めた成長期、社員数を増やしてシェアを拡大する時期
○レイターステージ
…収益黒字化の目処が立ち、株式上場の準備をする

ベンチャー企業への出資は、できるだけ早い段階で行ったほうが、少額の資金で一定の株式シェアを獲得できるため、シードからアーリーステージにかけての出資が増えているのだ。大まかに言うと、シードステージでは数百万~1千万円、アーリーステージでは、数千万円~1億円規模の出資が行われている。

しかし、持株比率が高い株主が増えることで、無理に株式上場を急がされたり、利益優先の事業方針に傾倒しなくてはいけないなどの弊害もある。株式による資金調達は、会社の所有権を切り売りすることに他ならず、一度変化した株主構成は、二度と元には戻せないため、資本政策は慎重に行う必要がある。最近では、資金調達の方法も多様化しているため、事業の内容によっては、それ以外の選択肢も考えられる。

そこで、新たな方法として実用段階に入りつつあるのが、「クラウドファンディング」による資金調達である。矢野総研の調査によると、国内のクラウドファンディング市場は、2012年に 71億円だったのが、2016年には417億円にまで拡大することが見込まれている。

《国内クラウドファンディングの成長推移》

・2012年…… 71.6億円
・2013年……124.2億円
・2014年……216.1億円
・2015年……363.3億円
・2016年……477.8億円(見込み)
─────────────────
※出所:矢野経済研究所

さらに海外ではクラウドファンディング市場が活発だ。クラウド分野の調査を手掛ける Massolution社のレポートによると、2015年に世界のクラウドファンディングで調達された資金総額は約340億ドル(3.4兆円)にもなり、金融業界からも新たな投資対象として資金が流れている。


クラウドファンディングには、「寄付型」「購入型」「貸付型」「投資型」などの種類があり、調達したい資金の性質によっても、どのタイプを使うのが良いのかは違ってくる。分野別にみても、IT、生活消費財、医療、農業、教育、住宅ローン、不動産などにクラウドファンディングの活用が普及してきており、クラウドから資金を調達するための専門職が成り立つようになってきている。(この内容はJNEWS会員レポートの一部です。レポート本編ではクラウドファンディングの専門職について詳しく解説しています。記事一覧 / JNEWSについて

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