JNEWS会員配信日 2013/12/16
フィリピンの公務員には「13ヶ月目」と呼ばれる、年間給与+1ヶ月分のボーナスが一律支給されることが長い習慣になっていた。しかし、公務員の人件費削減と、有能な人材の“やる気”を引き出すために、2012年から、仕事のパフォーマンスに連動した賞与制度への改革を進めている。
たとえば、公立学校の教員も、学力テストのスコアや生徒の中退率などを評価の対象として、それがボーナスの支給額に反映されるし、警察官も同様だ。
従来の一律ボーナスでは、すべての公務員に平均1万ペソ(約2.3万円)が支給されていたが、新制度では、各職員の仕事に対する成果を、「Best」「Better」「Good」「Poor」という4段階に評価して、ボーナスの支給額に差を付けている。
しかも、最低ランクの「Poor」に評価された職員(全体の35%)にはボーナスが支給されない。これにより、政府はボーナス資金の総額を削減することができる。
一方、「Best(上位10%)」「Better(次の25%)」と評価された優秀な職員には、以前よりも高いボーナスを与えることにより、“飴とムチ”を使い分けている。
しかし、成果重視のボーナス制度では、個々の成績を追求する自分勝手な行動が増えて、組織の統率が取りにくくなることから、ボーナスの最終的な支給額は「個人のパフォーマンス」と「チームランク(所属する部署に対する評価)」の両軸で決められている。
そのため、最高額のボーナス(3.5万ペソ)を貰えるのは、個人とチームの評価が両方とも「Best」となる人材に限定されて、その割合はわずか1%に絞られる。これにより、政府はボーナス支給の総額を大幅に減らすことができる。
もう一つ、この制度で特徴的なのは、幹部職員も平職員もすべて平等にランク分けして、各ランクで決められた金額のボーナスを支給している点である。そのため、有能な平職員が最高額のボーナスを貰い、成果の乏しい幹部がゼロということもある。
これと同様の仕組みを、民間企業の「正社員と非正社員」の関係にも採用すれば、正社員だけがボーナスを貰える、という悪しき習慣は撤廃することができ、社内全体の士気を高めることができる。ボーナスの分配率については、資金の都合と、社内の競争意識をどこまで駆り立てるのかにより、調整していけばよい。
●ボーナス制度によって生じる社内の不満
●賞与資金を縮小してやる気を引き出すボーナス改革
●公務員にも導入されるパフォーマンスボーナスの仕組み
●非現金ボーナスで社員を刺激する心理テクニック
●ディズニーに学ぶ非正社員向けボーナス特典の付け方
●割引特典による非正社員インセンティブの仕組み
●外発的動機から内発的動機へのステップアップ
●若手社員のやる気を誘発させるリバース・メンタリング
JNEWS LETTER 2013.12.16
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