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1勝9敗でも成功する新規事業計画の立て方と起業スタイル

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JNEWS会員配信日 2014/3/14

 起業や新規事業の立ち上げは、ゼロから1を生み出す作業です。アイデアとして面白い事業プランは色々と考えられても、事業を実行して利益を出すまでの過程では、様々な問題点やトラブルが発生してきます。

起業者の多くは、自分の考えた事業プランを“過大評価”しやすい傾向にあり、問題点を客観的に把握する作業を怠りがちです。どんな事業でも、最初から完璧なものは無く、準備段階からできるだけ多くの問題点やリスクを把握して、その解決策を一つずつ用意していくことが、事業計画作りの本質となります。

そのため、事業計画は起業者自身の中だけで抱えるのではなく、信頼できる友人や仕事仲間、専門家など、他人の意見を聞くことも大切です。そこで指摘された問題点を塗りつぶしていく形で、事業計画を練り直していくことで、市場環境の変化や、ライバルの出現にも対応できるビジネスモデルが熟成されていきます。

逆に、事業計画の中で、一つの問題点を指摘されたからといって、すぐに諦めてしまう人は、「起業に適していない」という見方もできます。資金面のサポートをする銀行や投資家などは、経営者がトラブルに直面した時の「問題解決能力」を重視しており、そこでの信頼を得られなければ、大切な資金を託してもらうことはできません。

JNEWS事業相談の中でも、事業立ち上げ後に想定される問題点を指摘していますが、それに対して「計画を練り直して、何度も相談してくる人」の成功確率は非常に高いという特性があります。

【自分の適性、条件に合った事業テーマを探す】

 「有望市場、有望ビジネス」と言われている分野に参入すれば、誰でも成功できるわけではありません。有望市場にはライバルも多く、価格競争に陥るサイクルも早くて、最終的には、知名度と資金力のある企業ほど有利です。そのためゼロからの起業であれば、大企業が参入するほどの規模ではない、ニッチな市場に着目するほうが、成功の確率は高くなります。

手掛けるビジネスは、自分の興味、知識、経験、専門性など、自身の適性がある分野でテーマをみつけることが大切です。起業者や経営者の仕事は、サラリーマンよりも過酷で、深夜や週末でも、仕事に打ち込む姿勢も必要になってきます。
それが「自分に向いた仕事」でなければ、努力を持続することはできません。

40歳以上の起業では、前職までのキャリアや実績に隣接した分野で起業テーマを見つけることが多いのですが、男性の場合には、サラリーマン時代に管理職を経験してから起業をする人が6割以上となっており、過去の仕事で築いた経験や人脈を活かせる事業を模索する傾向にあります。

一方、女性の場合には、出産や介護など、家庭環境の変化で、起業を決意する人が多く、日常生活の中で感じている「不便さ」などから、事業テーマを見つけています。

家庭と仕事の両立という面では、法人化をするのではなく、個人事業としてスモールビジネスを手掛けられる選択肢も、最近では充実してきました。ネットショップの開業、スクール講師、フリーランス職などは、自分の生活サイクルに応じて柔軟なワークスタイルで仕事ができるのが利点で、ビジネスが軌道に乗れば、パートや派遣社員として勤めるよりも、高収入を達成することができます。

《新規開業時の組織形態》

《新規開業時の年齢》

【必要な開業資金の捉え方】

 統計的にみた起業者の開業資金は、500万~1000万円が平均値。ただしこれは、店舗やオフィス、IT機材、その他に必要な機器などを揃える「設備資金」で大半が消えてしまうため、それよりも広い視野で、必要資金の総額を捉えておくことが大切です。

《起業当初に意識しておくべき資金》

事業を持続させていく上で毎月かかるのが「運転資金」で、開業当初は“持ち出し”の状態が続くため、仮に1千万円の手持ち資金があっても、月に 100万円ずつの赤字が生じていれば、10ヶ月で資金は枯渇します。そこから更に、銀行から1千万円の融資を受けたとしても、赤字の体質が変わらなければ、追加した資金もすぐに溶けてしまいます。

事業が軌道に乗っていない段階では、経営者は無給で働くケースも珍しくないために、事業に投じる資金とは別に、家族が暮らしていくための生活資金は確保しておくことが大切です。共働き世帯では、夫が起業して会社を軌道に乗せるまでの期間は、妻の収入を生活費に充てる(妻が起業する場合は、その逆)など、家族の協力も必要になってきます。

そうした状況から、事業を軌道に乗せるまでのタイムリミットは「2年前後」と言われていますが、月々の固定費を抑えたスモールビジネスに徹することで、事業の失敗確率は下げることができます。

新規開業者(2年経過時点)の平均月収は、男性が39.2万円、女性が25.1万円(出所:日本政策金融公庫)ですが、スモールビジネスでも、利益率の高い事業を掘り当てることにより、月収100~200万円を稼いでいる人達もいます。それだけに、事業テーマやビジネスモデルへの着眼点が重要となってきます。

【1勝9敗で新規事業を成功させる発想】

 スモールビジネスの利点には、「失敗に対するダメージが少ない」ということもあります。開業資金を1千万円として、その全額を一つの事業に投下して失敗すれば、次の事業に再チャレンジすることはできなくても、100万円のスモールビジネスなら10回のチャレンジをすることが可能です。

スモールビジネスとはいえ、軌道に乗せることができた事業は、単年ではなく複数年にわたる売上が期待できるため、1回の成功が1億円以上の収益になることも珍しくありません。そのため、スモールビジネスは勝率が「1勝9敗」でも、一つの事業をヒットさせることで、起業を成功させることができます。

米国では、もっとスケールの大きな起業が多いと思われていますが、実際には、1万ドル前後のスモールビジネスからスタートする起業者が大半で、クラウドファンディングサイトの「Kickstarter」で資金調達に成功した事業プロジェクトをみても、1万ドル以下の案件が、全体の7割以上を占めています。

《調達資金別にみた事業プロジェクト(Kickstarter)》

【賢い起業準備の方法と手順】

 どんなビジネスも、プランの立案、計画を実行して、事業を軌道に乗せるまでには数年の準備期間が必要になってきます。そのため、会社を辞めてから起業の準備をするのでは、無駄な時間が生じてしまいます、その間にも、生活資金は目減りしていくため、無収入の期間はできるだけ短くしなくてはいけません。

そこで、起業の準備は「会社の在籍期間中にしておく」のが賢い方法です。多くの会社では、社員の副業を禁止していますが、「副業=本職以外の収入や報酬が発生している状態」を指しており、収入が発生する前の準備段階は、それに該当しないと解釈されるのが一般的です。

実際のところ、会社を辞めてから、事業計画を立てるのでは遅く、サラリーマン時代から数年かけて、起業の準備をする計画性と行動力が無ければ、成功することは難しいとも言えます。

《具体的な起業の準備項目例》
・事業計画の作成
・Webサイトやブログの立ち上げ
・市場調査、ライバル業者のリサーチ
・商品仕入れ先など取引業者の開拓
・起業後に役立つ人脈作り
・必要な技術や資格の取得
・試作品の作成
・テストマーケティング

事業計画の成否を予測できるテストマーケティングまでは、サラリーマン時代に行い、そこで明確な手応えや反応が得られた後に、退職して、起業を実行するのが賢明です。

たとえば、新しい事業に関連したWebサイトやブログを立ち上げて、情報発信をすることにより、どの程度のアクセスが集まるのか、どんな反響があるのかを把握することでも、テストマーケティングをすることができます。

【ベンチャー企業の資金繰りと資本政策】

 スモールビジネスが軌道に乗り始めると、社員を増やして事業規模を拡大したいと考えるタイミングが訪れます。増益のペースに併せて、少しずつ事業を大きくしていくのが安全策ですが、それでは成長のペースが遅いことから、新たな資金調達をして成長速度を高める方法もあります。

資金調達の選択肢には、大きく分けて「金融機関からの融資」と「株主からの出資」の2種類があります。将来の成長が期待できるITビジネスの分野では、後者の方法が多く、日本でも、社員が数名のスモール企業が、数億円規模の増資を行うようなケースが増えてきています。

ユニークな事業がヒットして、各メディアで取り上げられる機会が増えてくると、ベンチャーキャピタル等からのコンタクトがあり、今後の事業の方向性がヒアリングされます。そこで“株式上場”などの目標が明確であれば、出資の提案が行われるという流れです。

新たな株主を受け入れて増資を行うことの利点は、現在の業績よりも大きなスケールで資金を調達することができ、銀行融資のように月々返済の縛りも無いため、赤字経営のままでも、将来の目標に向かって、事業拡大のアクセルを踏み込めることです。

しかし、他人の出資を受けることは、「会社の経営権を切り売りすること」とイコールで、経営者は、株主からのプレッシャーを常に感じながら、会社の舵取りをしていくことになります。そこで重要となるのは、出資者(株主)との相性で、お互いの価値観がズレると、事業の方向性にも迷いが生じてきます。

そこで、株式を割り当てる相手や、割当数などを決める「資本政策」は非常に重要で、その判断を一度間違えると、株主との力関係を弱めることが難しくなってしまいます。

《出資者(株主)の内訳例》
・オーナー経営者
・オーナーの親族、友人
・会社の役員、従業員
・ベンチャーキャピタル・投資会社
・個人の投資家(エンジェル)
・取引先企業(業務提携などの目的)

「独立した経営を維持したい」ということであれば、増資ではなく、金融機関からの融資で資金繰りをする選択肢もあります。いまは、中小企業に対する銀行融資も、平均金利が1~2%と低水準にあるため、業績が安定している会社にとっては“借り手市場”といえるでしょう。月々の返済をしっかりしていれば、銀行は経営方針に口を出してくることはありません。

ただし、銀行との融資取引がスタートすると、決算書の提出を求められて、毎期の業績がチェックされるようになります。銀行との繋がりが深くなれば、追加の融資も受けやすくなりますが、それは「負債の増加」を意味します。バブル時代の教訓を踏まえると、銀行との付き合いは、一定の距離感を保てる程度に留めておくのがベストです。

起業の方法やスタイルは、その人の環境や条件によって様々ですが、最終的な成功者となるのは「事業を長年にわたり持続させることができる人」です。軽微な失敗は繰り返しながらも、決して致命傷は負わずに、地道な利益を何十年にもわたり積み重ねていくことが、顧客を裏切らない優良企業としての側面を併せ持っています。

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