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  サムスンの経営戦略は、ゼロから新製品を生み出すのではなく、既に業界でヒットしている製品の特徴や原価コストを分析して、それと同等の性能で、リーズナブルな製品を投入する手法によりシェアを拡大してきた。
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世界市場で拡大するサムスンの経営戦略
(リバースエンジニアリング型の製品開発)
JNEWS会員配信日 2012/11/20

 日本の大企業が衰退していく一方で、韓国にはサムスン電子、LG電子、現代自動車、ポスコ(製鉄)など、世界でシェアを拡大する企業が登場してきている。その背景には、資源も乏しいことに加え、国内人口が 4,800万人の市場(日本の4割)に過ぎないため、世界を視野に入れた近年の戦略が功を奏していることがある。

転換期となったのは、2008年のサブプライムローン問題。韓国政府系の銀行が巨額の損失を受けたことにより、韓国通貨「ウォン」の価値が大幅に下落したことで、逆に、ウォン安を追い風として輸出ビジネスが競争力を高めることとなった。そのため、韓国企業の成長は、為替に助けられている面もあり、円安に苦しむ日本の輸出企業とは対照的な条件といえる。

《ウォン−円の為替推移》

 

また、韓国企業は、財閥オーナー陣によるトップダウン方式の経営と、欧米流の最新手法も柔軟に取り入れるという二面性を持っている。そのため、資金調達から事業の実行に至るまでのスピードが速いのが特徴。

日本の上場企業の大半は、オーナー(株主)と経営とが分離していて、経営トップが数年のサイクルで交代しているが、サムスングループは創業者一族が長期にわたる経営を行っており、韓国本土から世界の拠点にある系列企業を、強力なリーダーシップで率いている。

《サムスン電子の業績推移》

 

《サムスン製品別の世界市場シェア率(2011年時点)》

 

【過剰機能を排除して成功する韓国製品】

 サムスンの主力製品をみると、ゼロから技術を生み出すのではなく、他社が先駆けて開発した製品を分析して、それよりも安価で“品質もそこそこ良い”製品へと落とし込むことに長けている。

日本メーカーが、高機能や品質に対するこだわりが強いのに対して、サムスンはマーケティング重視の戦略で、まず最初に、消費者が求めている機能や価格帯を徹底的にリサーチして、それに合ったリーズナブルな製品を投入、各国向けの販路に乗せるのが得意、という違いがある。こうした製品開発の手法は「リバース&フォワードエンジニアリング」と呼ばれている。

つまり、他社の先行製品を分解するなどして得た分析結果(リバース)をもとに、自社の新製品を開発(フォーワード)するやり方。その際、販売する国の消費者ニーズに合わせ、機能の足し算や引き算をして、市場別に新製品を作り出す。新興国向けには、本当に必要な機能以外は削除して、過剰品質に伴う高価格になることを避けている。

先行製品のリサーチ対象としているのは、主に日本製品で、模倣に改良を加えた新製品を、日本メーカーよりも安く販売する戦略で、海外の市場を獲得してきた。技術面ではソニーやパナソニックほどではないが、そこまでの高品質を求めない消費者に向けてオファーすることが、サムスンは得意だ。



一昔前まで、品質にこだわる消費者は、値段は高いが日本製品を買っていた。韓国製品は安いが、品質面ではメイドインジャパンにはかなわないというのが世界認識があったからだ。しかしこの数年は、韓国製品は値段的な優位を保ちながらも、質も向上、ブランドイメージも上げてきたことから、日本製品から韓国製品への乗り換えが、新興国に限らず、欧米でも起きている。

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この記事の核となる項目
 ●サムスンにみる韓国企業の強さとは…
 ●サムスンの製品開発にみる無駄の省き方
 ●サムスンが重視する「デザイン経営」とは
 ●欧米流人事制度と韓国文化の融合による経営
 ●自由貿易協定による韓国企業の生き残り策
 ●自由貿易圏を舞台としたグローバルビジネス
 ●北米市場における「新興国」の存在
 ●欧州市場の新拠点となる東欧諸国の魅力
 ●日本国内とは違う世界の企業慣習とビジネスルール
 ●世界の有力企業が注目するブラジル経済と2億人の消費市場
 ●国境を意識しない海外起業の可能性と国際条約ネットワーク


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