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企業よりも先を行く NPOのWebサービスによるワーク革命 |
written in 2009/8/8
日本の企業が社内外の情報化に投じている資金(IT投資額)は年間で約17兆円にもなる。これは民間企業の設備投資全体に対して約2割という水準で、IT機器メーカーやソフトウエア会社が、それらの情報化投資によって成り立っている。IT市場の内訳としては、ハードウエアとソフトエアがちょうど5:5の割合である。
製造業の場合には、工場設備の投資額を増やしたメーカーほど製造能力は高くなり、ライバル他社を引き離すことができるが、IT投資に関しては、その法則が必ずしも当てはまるとは限らない。ホームページの話でいえば、1千万円の予算で制作した大企業のサイトよりも、その十分の一以下で制作したベンチャー企業のサイトのほうが出来映えが良くて、アクセス数が多いということが珍しくない。さらに個人ユーザーのブログなどは、ほとんどが無料サービスを利用して公開されているものだが、使える機能は充実していて不満を感じることはほとんどないだろう。
そうしてみると、企業ユーザーだけが数千万円、数億円という桁外れの金額で自社サーバーを運用したり、自社専用のソフトウエアを開発し続けることには違和感がある。1千万円でオーダーメイドしたソフトウエアよりも、無料で使えるWebサービスのほうが高機能で使いやすいということもあり、投資額と成果が比例するとは限らなくなっているのだ。しかもネット環境の急速な変化により、自前の設備を持つことのほうが逆に不利になったり、リスクと感じることも多くなってきた。
社員が情報共有することを目的としたイントラネットには、日常の業務に役立つ機能が充実しているものの、もともと社内専用のツールとして利用することを前提にしているため、提携業者や在宅勤務をする社員が外部からアクセスするには制約があったり、新機能を容易に追加することができないなど、意外に不便な面もある。これはシステムだけの問題ではなくて、社内のIT環境が対応できないために新事業が迅速に立ち上げられないなど、ビジネスの根幹にも関わってくる。
一方、感度の高い個人ユーザーや知的スペシャリスト達は、新たに登場してきた情報ツールを柔軟に使いこなして、独自のスタイルを築き始めている。その視点には二つあって、新しいツールによって自分の生活や仕事の方法を変えることと、そのツールによって新たなビジネスを生み出すことだ。「Web2.0」や「クラウド」というキーワードが登場して以降、情報収集やコミュニケーションの方法は大きく変化しており、遠方の仕事仲間への電話にしても、スカイプを使えば無料で何時間でも打ち合わせをすることが可能になっているし、iPhoneはノートパソコンに変わる新たな情報端末として、様々なアプリが出揃ってきた。またそのアプリを個人が制作して世界のユーザーに向けて売ることもできる。
そうなると従来の企業が得意としてきた、多額の資金による設備投資に依存しなくとも、知力を強みにしたビジネスで“小が大に勝つこと”も夢ではなくなっている。今回は知的プロが上手に活用している“仕事の道具や環境”を切り口として、これからのビジネスがどのように変わっていくのかを考えてみよう。
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●企業よりも先を行くNPOのWebサービスによるワーク革命
●NPOから変わり始める情報ツールの活用術
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●リアル店舗におけるITクラウドサービスの広げ方
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●米国政府が仕掛ける公務員の在宅勤務制度と新オフィス構想
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JNEWS LETTER 2009.8.8
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